6輪の怪異な姿を味わうプラモ/タミヤ タイレルP34

 タイヤがむき出しのフォーミュラマシン。空気抵抗を小さくしたいから前輪そのものを小さくしよう。でもそうするとブレーキやコーナリング性能が落ちる……じゃあ前輪を倍くっつければいいじゃないか。
 大のオトナが真面目に考えて生まれた空前絶後の6輪F1マシン、「タイレル P34」はその見た目が最高にクール。「タイヤは4つまでだからね!」というルールが生まれるまで、オレも6輪を試してみようかな……と数々のチームが研究に励みましたが、実践で戦ったのはこのP34だけ。そのスタイル、どう見てもプラモ向きです。

 最近はF1自体が地上波で見られなくなり、F1マシン自体の商品化も圧倒的に下火になりましたが、こうして昔のマシンを手に取り、恐竜がノシノシ歩いてたのを想像するように作り、見比べ、進化していくのを体感できるのがプラモのいいところ。
 上の写真は’60年代〜’80年代にかけて数多くのマシンの心臓となったフォード・コスワース・DFVエンジン。どのチームもミニ四駆のモーターみたいなノリでこのエンジンを買い、独自のマシンに載っけて戦いました。これを組むだけでも「F1で155勝したエンジン」を体感できちゃいます。

 特徴的なフロントタイヤ周りはステアリングこそしませんが、複雑な操舵機構とサスペンションの仕組みをふんわりと理解することができる構成。組み立ては結構シビれますが、だいたいのクルマ模型が似たような構造であるのに対し、P34にだけ組み込まれたこの世にふたつとない構造を味わえます。
 今回発売された仕様では1976年の日本グランプリで見られた特徴を再現するため、随所にエッチングパーツ(薄い金属製の板を加工したもの)が用意されています。薄いところは薄く、金属質なところはまさに金属で表現できるのが長所ですが、パッケージに「上級者向けキット」と書かれているとおり、その扱いが少々難しい。加工に不安がある人は、ランナーに並んだプラスチックパーツだけをキチッと貼り合わせるだけでもP34の奇抜なスタイルと構造を楽しめるので安心してください。

 何よりうれしいのはこのブルーのプラスチックです。シルバー、ブラックで構成されたメカニカルなシャシーにこのブルーのボディをドカンと乗せれば、それだけで実感あふれるP34が姿を表します。そこに黄色いゼッケンやelfのロゴマークがドドンと入れば説得力は倍増。「箱の中のものを貼るだけで最高に気持ちいい!」が、このP34の素晴らしいところだと思います。

 ニッパーと接着剤、そして少々の勇気があればだれでも味わえる唯一無二のマシンの魅力。ビッグスケールの1/12モデルも同時発売となりましたので、机の上のスペースに合わせて選びましょう。きっとこの夏の忘れられない思い出になります。みなさんも、ぜひ!

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からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。