21世紀だからこそ楽しみかたが無限大、「軽自動車プラモのイカ二貫」を味わおう!

▲選べる2種ではなくて、なんとひとつの箱に2個のクルマが入っています

 今日び、1/20スケールのカープラモを求めるのは艱難辛苦の旅です。
 なんせぴかぴかのブランニューキットが出ません。すっかり保守的な世の中になりましたから、かつて意欲的な大スケールだった1/20は今やみんながすっかりあきらめてしまったスケールとして扱われ、熱心な愛好家だけが今もあきらめきれずに厳しい在庫捜索の旅を細々と続けています。

▲アルトのボディパーツはCピラーの立ち上がったハリのあるカタチ
▲セルボのボディパーツはテールにかけてシュッと絞られた軽快なカタチ

 と、ここまではあくまでカープラモに限った話。
 意識の枠組をとっぱらって棚を眺めてみましょう。そこかしこに1/20スケールのプラモデルが見つかるはずです。バンダイスピリッツからは1/20スケールのアーマードトルーパーが出ました。かつてのバンダイといえば1/20スケールでの製品化にとても意欲的で、常識的なサイズの乗用車はもとより、中には1/20スケールのデコトラなんていう大物もありましたし、今も食玩では同スケールのポケモンたちが充実をみせています。よそに眼を移してもSF3D(=マシーネンクリーガー)という不動の人気コンテンツがあり、マックスファクトリーのラインナップでは多くのキャラクターフィギュアや実在人物のプラモがとにかく多彩で人気を博しています。

▲それぞれのシートに入れられた彫刻が、実車への真摯な視線をアピールしています
▲メッキされたホイールもしっかりシャープ!

 プラモデルメーカーがラインナップ数の多いそれまでのお決まりスケールをかなぐり捨てて新しいスケールに挑戦するとき、そこにはいつも強いアピールがあるものです。
 日本のプラモデルメーカーの場合、カープラモはもともとゼンマイやモーターによってびゅんびゅん走らせることを目的とした、いうなれば今のミニ四駆みたいな楽しみ方を提案するものが大勢を占めていました。それらはとても愉快なものでしたが、代償としてインテリアが動力源を仕込むために極端な上げ底となったり、競走するライバルとの公平を期すためか実車の大小関係なく大きさが変に調整されていたり、現在の精密第一のスケールモデルとは大いに手応えの違うものがほとんどだったのです。

▲アルトのグリルもさることながら、スペアタイヤまわりの彫刻は今の目で見ても出色の出来でしょう
▲こちらはセルボのグリルとダッシュボード。両者とも当時感を醸し出すオーバーフェンダーパーツ付き!

 1/20スケールは、1960年代の終わり頃に登場した、それまでの流れとは違う精密第一のプラモデルがまとったスケールのひとつでした。なにせボリュームがあるので細部までよく手をかけることができ、実物をスケールダウンする際の計算が容易で、大きく設計できるぶんモーターなどのかさばる機構を内に仕込んでもインテリアに悪影響が少なく済みますから、当時のバンダイや日本模型(ニチモ)、エルエスといった「次の一手が欲しい」プラモデルメーカーにとってはいっちょ腕のいいところを見せるに絶好のスケールでした。いわば1/20スケールは、他ならぬプラモデルメーカー自身がそれまでの路線に飽き足らないこだわりを盛り込める余裕のある大きさだったわけです。

▲説明書に指示はありませんが、車高短で組めるナックルパーツもランナーの中で元気に保存されています
▲若者の気分や暮らし向きをそのまま封じ込めたようなデカールも貼るのが楽しみ。

 事実、1/20スケールのプラモデルにはきらりと光る名作がとても多い。今回アオシマのラインナップに加わった1/20スケールのアルト/セルボもまた、かつて今井科学(イマイ)というプラモデルメーカーが、モーターで走らせる醍醐味も、精密なディテールの歓びもあきらめることなく採用して送り出した意欲作だったものです。イニシャルリリース当時はノーマル・シャコタン・ヒップアップのスタイリングを選べる3イン1仕様、ノーマルでも少々くせのある車高の設定に、当時の流行、クルマ好きのこだわりが克明に刻みつけられていてそそられます。軽自動車なのに手にとったときのボリュームが充実して感じられるのは、1/20スケールである前にアルト/セルボの実車を愛した人たちのプライドの反映であったのかもしれません。

 いま、プラモデルひとつぶんにも及ばないような価格で、ふたつの名作が手に入ります。旅のさいはてのさびれた玩具店を目指さずとも、世に金型の遺る限り、こうして向こうからあなたを訪ねてやってくるのです。

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bantowblog

1972年生まれ。元トライスタージャパン/オリオンモデルズ、旧ビーバーコーポレーション勤務を経て、今はアメリカンカープラモの深淵にどっぷり。毎週土曜22時から「バントウスペース」をホスト中。