新橋のタミヤプラモデルファクトリーでカーモデルを買うついでに、袋に入れられて分売されているいろんなプラモの「大トロパーツ」(このパーツ、ナイスでしょ?と店員さんがピックアップしているのだ)から、ひとりの女性を誘い出した。彼女はND型ロードスターに付属するドライバーフィギュアだ。カーモデルに人物が同梱されるのことは近年稀なのだが、おそらくNDのコンパクトさとオープンカーであることの魅力を最大限に引き出すべく考えられた、タミヤの粋な計らいなのだと思う。
ランナーをよく見ると、前後に割られた上半身の他に、膝丈スカートを穿いた下半身のパーツがふたつずつ入っている。それぞれのパーツは中心のワクに対して左右対称に配置されていて、シワの入り方や脚の微妙な曲げ方までミラーで反転したようになっているのがおもしろい。デジタル造形時代だからこそ可能な芸当だ。
組んでみると、それぞれの脚の角度に少しだけ動きが付けられている。右ハンドル仕様と左ハンドル仕様を選んで組むことのできるNDのシートとフットスペースの形状に合わせてどちらかを選ぶと、ピッタリ座らせることが可能になっているのだ。
座面に接する部分のスカート(太ももの裏)はシートの形状に合わせてごっそり削り落とされているのに加え、バックレストに密着するようロングヘアから背中にかけて平らになっているのも見どころだ。こういう造形になっているおかげで、シートの上にちゃんと重みのある人間が少し沈みこむように座る様子が表現されている。
今日はNDロードスターではなく、先日作った370Zをドライブしてもらおう。ひとまず上半身だけをシートとハンドルにフィッティングしてみて、かなり驚いた。左右の腕の間隔や、背中から手のひらまでの距離はほとんどピッタリフェアレディZにもマッチする。そしてなにより、かなりの美人さんであることにちょっとときめく。バッチリ化粧をしてスポーツカーを運転していたら、さぞかしカッコいいだろう。
ハンドルを一旦外してから下半身を潜り込ませると、ペダルやフットレストの類がつま先と干渉する。そのへんを除去し(ドライバーフィギュアが乗ったクルマを眺められるなら、軽微な犠牲だ!)、ハンドルを接着するための突起も切り飛ばしてハンドルは両手に接着してしまう。クルマの側をフィギュアに合わせていくことで、ドライバーフィギュアはめでたく370Zにもしっかりとマッチしてくれた。
大層な改造は不要なのに、効果は絶大。あなたのカーモデルにもこんなフィギュアが添えられると、静かに佇んでいるのとは違った景色が見えてくるはずだ。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。