大空に浮かぶイケメンのプラモ/TAKOM フォッケ・アハゲリス Fa330

 こんなハコ見たら、即買いです。パイプ椅子にプロペラみたいなのが付いてて、人間がむき出しで空を飛んでいるんだからさあ大変。しかもこれ、ヘリコプターじゃなくて眼下に描かれた潜水艦からワイヤーで引っ張られてる凧なんですよ。みんなが思い描く凧と違うのは、上についた無動力の回転翼。
 じつは回転翼ってエンジンやモーターを使って回すことによって揚力を発生させることもできるし、その反対に空気の流れに任せてぐるぐる回されることでパラシュート並の空気抵抗を得ることもできるのです。だからヘリコプターはエンジンがいきなり止まっても、ローターさえ自由に回転するようにしておけばフワリと降下することが可能なんですね(航空力学的用語の正しさはさておき、わかりやすいようにすごくざっくり説明してます)。

 このFa330というメカは「無動力のヘリコプターだって、凧揚げのように風に向かって引っ張ればぐんぐん上昇する」という仕組みを利用して、人間を空高くに浮かべてしまおうというトンチキなマシン。ドイツ海軍は潜水艦のはるか上空から敵の脅威を探知することを期待したのですが、まあそううまくはいかなかったようで……。

 メカのほうはなんかパイプみたいなパーツを組み合わせて作るんでしょうから、まあそのうち組み立てて「ほぉ〜」なんて言うとして、気になるのがこの空に浮かぶアニキですよ。「彫刻はJASONが担当しました」っていきなりハコに書いてあるんですけど、ジェイソンって誰。

 今回の大トロ。そう、このFa330のプラモ、なんと1/16スケールなので人間の身長が10cm以上ある。すごくデカいプラモなのです。そしてフィギュアはどう見てもデジタル造形。いわゆる粘土を手作業で盛り削りしたのではなく、PCの画面内でポリゴンデータをコネコネして作ったものです(シワや装備品のリアル感を見ていると、どうも3Dスキャンを併用しているようにも見えますね)。

 ドイツ海軍の潜水艦乗りが航空装備でこんなにシャープにプラモになっていること自体がもう驚天動地の大変なことなんですが、コイツが誰なのかはさておき、とにかくキレッキレの彫刻と見るからにパーツがビシッと合いそうな分割ラインにうっとりしちゃいます。このフィギュア欲しさに買ってもいいですよこのプラモ。

 なんたるイケメン。耳がないな……と思ったら、ヘッドホンを装着するので顔の左右が平らになってるんですね。彫りが深いし、プラスチックも透け感のないちょっと濃い目のグレーなので塗らずとも存在感のあるフィギュアとして机上にはっきりとした存在感をもたらしてくれます。

 ここで気になったのが靴のソール部分。パッケージイラストを見れば分かる通り、舵をとるためにペダルを踏んでいるポーズなので足の裏は丸見え。ここにビシッとソールのパターンが刻んであれば(そしてそれができるスケールだからこそ)すごくリアルなのにな……と思ったんですが、ツルッとしてるんですよねぇ。
 TAKOMのスタッフがそんなことに気づかないわけないので、もしかすると海軍の兵士は裏がツルツルの革靴を履いていたのかもしれません。こういうのをきっかけにインターネットでいろいろ調べるのも楽しい。プラモはあるがままを楽しんでもいいし、こんなふうに「読む」のもまた同じくらい楽しい。

 操縦桿やサイドのレバーを握る都合で手のパーツは後回しにしましたが、ざっくりと組み上げるとこんな大きさのすっごいイケメンが登場。しかしこの人、くるくる回る羽のついた凧に乗って風を受けながら空に浮かんでいるんですよねぇ。人間、必死こいて考えると不思議なものを作ってしまうわけですが、それをプラモでもう一度作って「なんだかなぁ」「すっげえなぁ」とぼやくのも、また不思議な面白みに満ちているのです。
 こんな1/16のキレキレな座りポーズ兵士というのは他にちょっと選択肢が見当たりませんし、いろんなところに座らせて愛でることができます。みなさんも、ぜひ!

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。