

「飛行機模型でございます」と言われてこのパーツが出てきたらマジでビビるじゃないですか。こりゃとんでもないキットを手にしてしまったぞ。「組むのにどれだけの工数がかかるんだ?」「どんだけ緻密な内部構造が手に入ってしまうんだ?」とはてなマークの連続。造形村のビッグスケールモデル、1/32の Ho 229 の第一印象であります。ちなみに複座型の新製品、「Ho 229 B」は全国のボークスにて7月5日(土)~27日(日)予約受付、8月9日(土)発売予定です。

上の写真が「こんなにかっこいい飛行機があってたまるか!」の代表格、Ho229 の実物。第二次世界大戦末期、ドイツ空軍が開発していた全翼型戦闘爆撃機で、パイプフレームに接着剤でベニヤ板を貼り合わせるという製法が採用されました。表面に塗られた炭素を含む塗料のおかげでレーダーへの反射を抑える意図も確認されていて、その形状や設計思想から「ステルス機の祖先」と呼ばれることも多い機体です……という通り一遍の実機解説はさておき、とにかく造形村のホルテンはヤバい。「そこまでやるの!」のカタマリです。

主翼内部の桁は長手の太いものと前後方向に走る細いものが実機どおりに組み合わさってパーツになっており、これだけで1/72の飛行機模型ひとつぶんくらいの存在感があります。普通の飛行機模型の主翼って板を上下に貼り合わせたら終わり……って構造が多いのですが、こちらは「実物の構造が面白いんだから、外観だけじゃなくて構造から楽しもうよ!」という設計になっておるわけですね。

私はとにかく手早く完成させるのがプラモをたくさん楽しむことに繋がると思っている人間なので、「どうせそんな骨組みは見えなくなるじゃないですか……」という気持ちもないことはないのですが、こうして透明な外板のパーツを用意されると「うっ、完成後も中身が見えるならそれは楽しいっすね」と手のひらクルーしてしまうわけです。表面がやや梨地なのが少々惜しい気もしますが、しかしこれがソリッドなグレーのプラスチックであるよりは何倍も楽しい。「一緒にこの飛行機の構造を眺めようぜ!」と、造形村が肩にガッと腕を回してくるような力強い提案を感じます。

上写真は本物の Ho229 の胴体部分。コクピット前方の左右にズドーンと大きな穴が開いています。ここは Jumo 004 という世界で初めて実用化されたジェットエンジンのインテーク。ジェット機の歴史の黎明がこのなかに収められているのです。そして当然ながらこのプラモデルは……エンジンをほぼ完璧に”再現”しています。どういうことなの……!

普段あたりまえのように旅客機に乗る我々ですが、それを動かしているジェットエンジンの仕組みを正確に説明できる人はあまり多くないはず。小さい羽根の付いたバウムクーヘンみたいなものが何層にも重なり、ローター(回転部)とステーター(固定部)が空気をどんどん狭い空間に押し込んで圧縮します。そこに燃料を混ぜて火を付けると、後方から膨張したジェットが吹き出し、ついでに先程の圧縮機とシャフトでつながったタービンを回します。「そんなことがうまくいくんですか……」と思うアナタに、この模型は無言でその仕組を教えてくれるのです。

8枚のローターと7枚のステーターを2分割された筒に収め、燃焼室がありタービンがありエキゾーストがあり……というのを組み上げます。パーツの精度はかなり高いので、筒を重ねていくような組み立て工程を経ても全体はビシッとまっすぐに仕上がります。はっきり言っていちばんの見どころである圧縮機は完成後にまったく見えなくなってしまうので、工程をスキップしたい人は「圧縮機を組み込まずに仕上げる」というのも可能だし、反対にすべてのセクションの内部を作り込んでから「カットモデル」として仕上げることもできちゃいます(ちなみに燃焼器はプラパーツになっていませんが、造形村からレジン製パーツが別売りされています)。

エンジンの外部に取り付けられるこまかな補機類やそれらを繋ぐ配管もすべて執拗にプラスチックパーツで再現されています。説明書をよく読みながらピンセットを使って入り組んだ配管を組んでいくのには集中力を要求されますが、イマドキの速乾性接着剤を使えばちゃんと設計意図のとおりに組み上がります。このゴチャゴチャした内部機構が飛行機のシュッとした外皮の中に収まっているというのがエクスタシーなんですなぁ。

さて、エンジンだけではなくコクピットやそれらを機体の中に保持するための構造体もこのキットではまるで実機を組み立てるように楽しめる内容になっています。ただ組んで塗装して……だけではなく、中身があるからこそできる表現も含めてこれから造形村の Ho 229 を楽しんでまいります。みなさんもぜひキットを手に入れて、そのすんごい景色をいっしょに眺めましょう!そんじゃ、また。