ヘリコプターのプラモデルが好きだ。ヌボーっとした胴体の上にデッカいローター(回転翼)が付いていて、ハードな汚しも似合うのがいい。とくにMi-4というヘリコプターは自分にとって特別。フィンランドのヴァンター航空博物館で見たオイルまみれのハウンドは、いかにも「キミが塗って再現してくれ!」と言わんばかりの迫力があった。いちど1/72スケールのプラモデルを作ったことがあったが、もっと大きな1/48のプラモデルがとんでもなく素晴らしい出来だったので買ってきた。
機体表面に走るパネルライン、所々見られる開口部に彫られたメッシュ、そして左右方向にも動くスライド金型を駆使してびっしりと入れられたリベット。見ているだけでウットリだ。荒々しい表面のテクスチャは、たぶん筆塗りが似合う。ただディテールがシャープなだけのヘリコプター模型がほしければ選択肢はいっぱいあるのだが、このプラモデルのスゴいところはローターにある。
ヘリコプターのローターは、駐機状態(地面の上で静止している状態)では自重で先端に向かって垂れ下がる。ほとんどのヘリコプターの模型はこれがベッタリとまっすぐになったパーツになっているのだが、トランペッターの1/48 Mi-4Aは最初からしなった形状でパーツ化されている。あたりまえのようでいて、これはかなり珍しい。エンジンフードや後部のカーゴドアが開いた状態(=地上で整備や荷の積み下ろしをしているところ)も再現できるプラモだから、このヘリコプターは地面にいなければいけない。回転が止まったローターが垂れ下がっているというのは、そこに説得力を与えてくれる。
もう10年も前のことだが、実機を見ながらバシャバシャ撮った写真はいまでも残してある。テイルローターの付け根のメカニカルなしくみ、薄くブルーがかったグレーの塗装、そこに染み出すオイルの茶色……。ああ、塗装したい!と思わせるディテールがたくさんだ。
矢も盾もたまらず、エンジンから組み始めた。最近のトランペッターは接着のためのパーツのクリアランスこそまだイマイチなところもあるが、ディテールの深さやシャープさ、なにより模型としての「それらしさ」はしっかりと備えている。ヘリコプターのプラモデルがほしいと思ったら、このMi-4をオススメしたい。シンプルなパーツ構成で、迫力あるサイズ。複雑な塗り分けがないかわりに、あなたが筆を走らせれば走らせただけ、かっこいい景色が見えてくるはずだ。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。