組んだ人だけが知っている、新バットモービルの生真面目な隠し味。

 「ウチは長いことこのスタイルでやってるんで」というお店には熱烈なファンがいることが多い。最近よく行く中華料理店は酢豚も揚げ白身魚の甘酢和えも黒酢で仕上げた真っ黒いのが出てくる。シナっとしたピーマンや人参は同じように真っ黒になっているが、サッと炒めただけの玉ねぎだけがシャキシャキ感を保っていて、表面をコートする油が黒酢を弾き、白くその肌を輝かせている。
 バンダイスピリッツの新バットモービルも、ひさびさに食べる「クセつよなカーモデル」という感じで、これは15年ほど前にSC430というクルマでGT500に参戦していた頃のバンダイが売っていたカーモデルの味を彷彿とさせる。普通のカーモデルだったらなんだか繊細な作業を要求されるキャビンの中のロールケージも、接着剤無しでスパスパと組み立てられてしまうところなんか、とくに(見た目はちょっとゴッツいけれど)。

 組み上がった巨大なV8エンジンをシャーシに載せると、これがアメリカンマッスルカーらしからぬリアエンジンであることにようやく気づく。これも巨大なハメ合わせでズゴンとマウントされるもんだから、裏から見たときのリアリティはちょっと犠牲になっているが、俯瞰で見ると充分「新バットモービルの模型」として映えるようになっている。しかしこんなによくできたエンジンがボディに覆われてしまったらもったいないなぁ、なんて思っていると……。

 パッケージイラストは斜め前方から見たアングルなのでまったく気づかなかったのだが、リアはサイドこそボディに覆われているものの、基本的にはトラス構造のパイプフレームが張り出しているだけでエンジンはむき出し。そこに申し訳程度のブレーキランプがちょこんとハマる構造になっている。何本も突き出た排気管はそのトラスの隙間からスルリと伸びてどこにも干渉することはなく、これまた何も考えずにパチパチ組んでいるだけなのにいっさいの角度のブレもないし、空中で絡み合うような構造のパイプ類もいっさい気を使わずにバチリピタリと合っていく。

 このキットを買った人がみな驚いているように、ボンネット以外は写真のごとくバラバラ。もとのデザインがエッジの立ったものだし、流れるようなボディと言うよりも要所要所で面が途切れたものになっているので、たしかにこうやって割ったほうが理にかなっている。しかしこれがもしバンダイスピリッツのプラモじゃなかったら、おそらくこれらのパネルを定位置に収めるのはなかなか難しい工作になるはずだ。見えなくなるところは割り切って「クルマの構造」を無視した設計になっているからこそできる、ガンプラ的な発想。
 「ウチは長いことこのスタイルでやってるんで」という矜持みたいなものを感じながら、最後の最後にアッと小さな声を出す。

 完成したら全く見えなくなってしまうところに取り付けられる銀色のブレーキディスクとキャリパー。ここにホイールを嵌めたら完成なのだが、「スケールモデルの美味しいところも、ちゃんと分かってますよ」というこの目配せは、まるで組んだ人だけが知っている「王道の味の裏メニュー」という感じで、このキットが単なる異端児ではないことを無言で伝えるメッセージなのである。

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。