傍の男は時代を超える。/ICM 1/24 ヘンリーフォード & Co.

 ファッションというのは「着飾る」という要素が多分にある気がしますが、そういう流行りとは少し違う様子の世界があって、日常と地続きなフィールドで繰り広げられる面白い領域もあります。かつて、ある名物店主が「冷蔵庫の卵を買い足すように、自然に買う服」というものすごいスローガンを立てて独特のセレクトをしていましたが、そういう、日常に寄り添う服というのがクローゼットに残るものだという優れたコンセプトだったなと思います。
 そのような服装のデザインをどこから持ってくるのかというと、前衛的でも華美でもない衣服からの抽出が非常に多いです。ミリタリー物をマイルドに落とし込んだりするものもそうだし、それとは別の作業着的なものをデザインソースにしているものもあったりして、写真に写るとしたら決して主役ではない人たちの服装を現代に蘇らせて、雰囲気のいい服を作っているブランドがちらほら。

 写真の傍にいるような存在という意味ではキットの名前ですら「仲間たち」といった意味合いでモブのような扱いになってしまっているICMのヘンリー・フォード&Coのメカニックの男性はまさにそうでしょう。この男性、クラシックな開襟シャツにデニムと思しきオーバーオール、ハンチング帽とついつい我々が想像する古めかしい整備士そのものの姿をしていますが、顔がとても良い。正確にいうと首回りまで。胸像として完成させてしまってもなんら違和感のなさそうな首の角度や顔つきにはとても驚きました。ICMは1/32だとか1/16でもそうですが、本当に良い顔つきの男性のフィギュアを作ってくれます。

 この整備士としては「時代遅れ」とか「ちょっと古い」といわれる頃をとっくに過ぎたような服装がゆえに時代を超越した感じがあり、どの時期の、どんなタイプのカーモデルにも似合ってしまう魅力があります。頼り甲斐のあるポーズはなんでも直してしまう天才整備士といった風貌でとてもいい雰囲気です。

クリスチ
クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。