プラモデルのジャケ買い/ハセガワのドイツ軍仕様 D.520の話。

 買うプラモが決まっているのも楽しいけど、何があるかわからないプラモ屋さんで端から端まで棚を眺めるのも同じかそれ以上に楽しい。ふと目に飛び込んだこのハコなんて、そういう探し方をしなければ絶対に出会わなかっただろう一品だ。少し黄色い雲と赤みがかった空の青。そして、「こんなに鼻の長いドイツ機があるか!」と直感的に思わせる、機体のシルエットとマーキングのミスマッチ。
 右下のタイトルを読んでようやく得心したのは、これがフランスのドボアチーヌ(……というのはハセガワ表記で、ドボワチンとかデヴォアティーヌなんて発音も一般的だ)という飛行機メーカーのD.520をドイツ空軍が接収して運用していたものだということ。

 フランス機というのはどうしてもちぐはぐな色の迷彩塗装が悪さをしているイメージが強くて、それがどうにも好きになれなかった。しかしどうだろう。ドイツ機のシュッとしたカラーに描かれたパッケージアートに導かれて手に取り、パーツを眺めてみれば、ロングノーズ・ショートデッキのスポーツカーのようなスタイリッシュさだ。なるほど、カタチだけではわからないこと、色だけではわからないことがあるもんだ。ならば、ハコの絵のとおりに塗ってみよう、と心がひとところにカチッと定まる。

 キャノピーのマスキングシートは市販のものを携帯からすぐさま注文して手に入れた。矢も盾もたまらず、即座に組み立てる。1/72の単発レシプロ機というのはかなり小さいので、几帳面に作ろうとするとなかなか骨なのだが、いまやりたいことは「すぐにシルエットを見たい」「すぐにハコと同じ色に塗りたい」というふたつなので、そのようにする。オレのプラモを、オレのスタイルで組む……というのは、いつだって楽しくて仕方ないことだ。

 細かいことを考えず、指定の色を使って筆で塗る。下地はサラッと黒いスプレーを吹いておいたが、その上に黒を塗りつぶさない程度にガサガサと塗料を乗せれば、タッチが出るだろうと信じる。例えば塗料の濃さとか筆の運び方を「スジ彫りのなかに塗料が入り込まない感じ」みたいに決めておくと、全体が同じような雰囲気で塗れることに気がつく。例によって例のごとく、こんな塗り方は初めてだし、うまくいくかどうかも自信はない。でも、未知の領域に踏み込んでいるときは無邪気な興奮がある。

 茶色と黄色も同じように塗っていった。色の境目はボヤボヤで、近くで見ると薄青もムラがありすぎてとても「うまい模型」には見えない。焦るけど、「デカールを貼れば絶対に大丈夫だ」と自分を落ち着かせる。このルートで山を登ったことはないけど、周りの景色は確実に山頂に近づいているから歩いている道は間違っていないぞ……という、不思議に冷静な感覚。こんなスタイルの模型作りだって、なんどかやれば、きっと慣れるはずだ。

 大きめのデカールをバシッと貼って、空をプリントアウトした紙の前で記念撮影。ためつすがめつしてみると、箱絵はこのプラモよりも随分とスマートに、手前と奥の翼の長さやひねり具合もデフォルメして描かれていることがわかる。とは言え、この模型は「惚れた絵に最短距離で近づきたい」という気持ちをすごくストレートに叩きつけることができた。この感覚はいままでになかったものだし、とても気に入った。またこんな素敵な絵に出会えたら、次も似たようなスタイルで迫ってみよう。

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。