悩める無色より、今日の一色/エアフィックスのデファイアントが完成した日。

 なんだか知らんがやたらと変なカタチの飛行機があるな……と手にしたエアフィックスのボールトンポール・デファイアント。見るからに鈍重そうな飛行機がドイツの爆撃機を果敢にやっつけているそのパッケージアートにみごと引き寄せられたわけだが、なんだかんだでプラモを作る前に説明書やらインターネットやらで実機の話を読み漁る。ジャケットだけを頼りにレコードを買ってからそれをプレイヤーにかけて、フムフムとライナーノーツを読むように楽しむのは、プラモの持つかなり不思議な側面のひとつじゃなかろうか。

 で、一番面倒なのが(重たい腰をさらに重たくするのが)窓枠の塗り分けである。とくにこのデファイアントという飛行機はやたらめったらと窓の枚数が多く、後ろにはドーム型の機銃座までくっついている。手仕事ならば1時間では終わらないだろうこの工程も、市販のカット済みマスキングシートを使えばサクッと完了する。プラモ作りを時給換算するのは無粋かも知れないけど、「飛行機模型は窓の塗装がなんだかな〜」と思っている人にこそ、先人の努力をお金で手に入れるメリットを知ってもらいたい。

 いざ組み始めたら、これがまた良い。簡単な構造でも見たことのない配置のコクピットが出来上がっていくところとか、ピタッと閉じた状態で作れる着陸脚。さらに胴体と主翼の間に隙間ができたら嫌だなぁ……という気持ちを軽々と飛び越えていく意外なパーツ分割法。知らない飛行機が知らない組み味でどんどん形になっていくにつれ、自分がこの飛行機のことを知り、好きになっていく過程。プラモ作りは、たぶんデートに近い。

 せっかくの飛行機も、飛んでいる状態で作ったのにパイロットが乗っていないんじゃ幽霊の乗り物である。ここはしっかりした彫刻が嬉しいエアフィックスの兄貴達をサラサラと筆で塗って楽しもう。すごく小さなフィギュアも、塗料と筆を選んで塗る順番をしっかり決めておけば、そんなに難しいものではない。むしろ「小さいからこそ雰囲気で楽しもう!」という割り切りができるのが1/72スケールのいいところなんじゃないか、と最近の私は睨んでいる。

 最後に全体の塗装をどうしようか決めきれずに机の上でずっと薄青色のプラスチックが鎮座していたのだが、ある日突然「やっぱり黒で行こう」と決められた。どうしようか悩んでいるのも楽しいものだけど、こうして完成した模型を見るとドーパミンが出る。たまたまこの飛行機は真っ黒の塗装が実在したのだけど、そうじゃない飛行機も「エイヤ」で一色に塗ってしまうのもいいだろう。思いがけないカタチと色がそこに現れれば、それは紛れもなくあなたの模型になるし、なによりも「完成だ」と思ったときが完成で、その瞬間はいつだって幸福である。もし幸福でなければ……もう一個買ってこれるというのも、プラモのいいところなのだから。

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。