プラモのクセが俺の嗜好を引き出す。 ICM 1/72 I-1(IL-400b)

 ICMの1/72 I-1(IL-400b)は、トタン屋根みたいな波板を翼に用いた見た目がユニークなキット。そして何より安い。パーツ点数は少ないものの、ボディ同士の貼り合わせや座席の操縦桿を貼るためのダボとピンなかったりして、わずかに位置決めのセンスが問われる。翼はなんとなく位置が定まるが、バシッと固定されるわけでもないのでこれも同様。

 とはいうものの、パーツの精度が良いので貼り合わせていくのは結構気持ちよい。というか、こういう組み立てセンスを問われるキットを作っていると組み立て好きの私はとても楽しくなる。それと「あ、俺うまくなったな」なんて感慨に浸れるのもよい。

 翼を指で挟んで流し込み接着剤をつけようとした瞬間に「これは波板に沿って接着剤が流れて指とパーツがくっつくパターンだ」と気づいて量を調整して慎重に貼る。こういう些細な危険察知にも、自分が普段使っている道具が何をするものなのかというのがわかっている感じ。いろいろなことに注意と確認が向いているモデリングは自分の精神状態が非常に良いことを認識させてくれる。片翼が三パーツに分かれているのだけど、これが一つになる瞬間がとても楽しく、素晴らしい。

 ところで、銀翼の素晴らしいこのキットだけども銀塗装におけるセオリーの一つ「下地に黒を塗っておく」というのを「黒を影色とした場合に果たして影は黒なのか?」という疑問と「自然界では暗い影の色は青紫を帯びている」という理由を並べて紫色を下地に使った。上に塗られた銀色から透ける紫色は黒色の硬質感よりも色気のがあり毒々しい生物感がある。そのせいでI-1の見た目の特異さに輪がかかり、存在感が強くなった。

 波板に沿って銀色の塗料を吸った筆を運ぶのが気持ちよくてかなり気分良く塗っていたのだけど「尾翼を塗って完成」と思ったときに、手が止まった。紫色が残っている部分に「欠けている感じ」を見て取って、それがなんだか良いと思ったからだ。段ボールをビリビリに破くと表面の紙が剥がれて、中の波板が覗くときがある。あの破れている様子が結構好きで、それを思い出したりした。

 「中はこうなっているんだ」という外見を剥いだような見た目は不完全ながらも美しさがあると思う。塗りたくなったら塗れば良いし、たとえ途中でも「この状態が良い」と思って手を止めることもプラモデル作りの面白さだなと改めて感じることができた。組み立てから塗装、何を美しいと思い完成にするか。所々の決断が自分の思い通りに進む製作はとても面白かった。

クリスチ
クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。