

歩兵戦闘車と言われても、砲塔も履帯もついてて戦車みたいな格好だし、なんなんだろうねコイツ……って感じですよね。確かに見た目はほぼ戦車なんですが、使用目的がけっこう違いまして、歩兵戦闘車は「歩兵一個分隊くらいを車内に積んで運びつつ、ほどよい大きさの機関砲やミサイルで歩兵を支援できて、なおかつ状況によっては車内からも歩兵が鉄砲を撃てるといいな……」という、割と欲張りな目的で作られた車両です。

実はこのカテゴリーの車両で先行していたのは、アメリカではなくソ連でした。1967年に公開されたBMP-1という車両がそれでして、このBMP-1は「歩兵8人を運べるし、口径73㎜の主砲がついてるし、対戦車ミサイルが撃てて戦車も狩れるし、おまけに歩兵が車内から銃を撃って核戦争下でも戦えます」というものでした。なんせ当時は冷戦真っ只中。戦場が放射能汚染されて生身の歩兵は車両から降りただけで即死、という状況を真剣に考えなくてはならなかったので、「密閉した車内から歩兵が全方向に攻撃できる」という能力は西側にとって衝撃的だったそうです。冷戦やべえな。

で、当時のアメリカには兵員輸送車としてM113という車両があったはあったんですが、使用目的の先見性も戦闘能力もBMP-1に比べると見劣りしていました。というわけで、BMPに追いつけ追い越せで作り、1979年に採用されたのがM2ブラッドレー。M113よりずっと豪華で戦闘的、その上カクカクした見た目はM1エイブラムスと並んで「これが未来のアメリカ陸軍だ!」という印象をもたらしました。
タミヤがこのM2ブラッドレーをキット化したのは、1985年のことです。当時のMMは現用車両をボコボコ発売していた時期で、このブラッドレーから飛び出してくる歩兵としても使えるフィギュアとして、同年には「アメリカ現用陸軍歩兵セット」も発売されています。で、このブラッドレーは発売からしばらく経って湾岸戦争にも派遣されており、タミヤはこの時の仕様も「M2A2スーパーブラッドレー歩兵戦闘車」としてキット化。さらに湾岸戦争での戦訓を取り入れ、2003年のイラク戦争などでも使われたのが、2003年に発売された「M2A2 ODS デザートブラッドレー」ということになります。ブラッドレー祭りですね! 今回紹介するのは2003年に発売された「M2A2 ODS デザートブラッドレー」のプラモです。





基本的なパーツは以前発売されたノーマルのブラッドレーおよびスーパーブラッドレーをベースにしてはいるんですが、2003年版では排気管の形や砲塔にくっついているレーザー測距儀などの形が変わっておりまして、さらにフィギュアや車体に取り付けられた敵味方識別用パネルであるCIPや大小のアリスパック、スリーピングマットなども付属。フィギュアの装備が今風になってるな~と思って見てたんですが、考えてみたらこのフィギュアの装備だってすでに20年くらい昔のものなんですね。怖……!




というわけで組み立ててみると、これがもう文句なしのかっこよさ。斜めの板が複雑に組み合わさった車体や砲塔の上に、パキパキにボルトの彫刻が入った車体の装甲板が重なり、どの方向から見てもガチャガチャした情報量が視界に入ってきます。う~ん、目が嬉しがっているのがわかる。そして、さらにその上に布製の装備品がゴロゴロ乗っかり、中の歩兵の存在を感じさせております。現代の装甲車両のプラモを作る嬉しみはこの大量のボルトの存在にあるのではないか、デコボコ出っ張ったボルトにスミ入れしたり汚れを描き込んだりしている時にしか得られない栄養素があるのではないか、とおれは常々思っているのですが、このボルトの嬉しみを存分に味わえるキットですね、これは。



しかしまあ、やっぱりアメリカ軍の現用車両は実戦経験があるからこその理屈が見えてくる感じがありますね。ブラッドレー一台とってみても、見事に車体前面のエンジンが収まっている場所、砲塔正面の撃たれやすい場所、車体側面の面積が広い場所に増加装甲が貼り付けてあり、「なるほど、ここが撃たれるのね……」という場所を一発で理解することができます。その他の荷物にしても「今の歩兵ってこんなに荷物が多いのか」「そりゃ寝袋だけじゃなくて、マットもないと寝られないよなあ」と納得することしきり。
このあたりの切迫感は、実際に最前線で戦っている車両ならでは。普段は大戦中の戦車しか作らないという人でも、パッと組み立てて「なるほど、現代戦~」という気分になるのにうってつけのキットです。デコボコしたディテールと満載の装備品は、組み立てるだけで幸せな気分になれますよ!
組み立てサポート/山本海人
