ミニ四駆シリーズ100作目のメモリアルなマシンは、タミヤのスケールモデルの思想も体現した意欲作でした。

 銀座の一等地にあるNISSAN CROSSINGで、そのマシンに会うことができる。「NISSAN FORMULA E」は電気で走るフォーミュラカーだ。空気をバカスカ取り込んでエンジンに送るF1マシンとはまるで違うコンセプト、乱流を抑えるためにホイールを覆ったボディワーク。ノーズからテールにかけて一枚の面がうっとりするようなラインを描き、ウイング類を空中で繋ぐ構造と共鳴する様がすこぶるカッコいい。

 フォーミュラEは、言ってみれば巨大なミニ四駆レースみたいなもんだ。エンジンサウンドの代わりに、モーターとギアとタイヤの唸りがコースに響く。レースをエキサイティングにするために、特定のゾーンを通過すると使える「アタックモード」やSNSで人気のパイロットに与えられる「ファンブースト」といった加速イベントも用意されているので、まるでレースゲームの世界のようですらある。

 「なんでこれがプラモにならんかな〜」と思っていたら、タミヤからRCカーが発売された。発表された瞬間から絶対に買おうと決めていたので(作るのはかなり難しそうだけど)一も二もなく手に入れた。それでもやっぱり、プラモで欲しいと思ってしまうのがモデラーの性である。プラスチックのシャープなパーツを切って組んでドドンと置いておきたいのだ。

 で、5月の静岡ホビーショーで発表されたミニ四駆シリーズの記念すべき100作目、エレグリッターである。明確にフォーミュラEを意識した、未来的なスタイル。「エンジンで走るクルマを模した電動ラジコンのミニチュア」という性格が強かったミニ四駆の歴史において、明らかに「実在する電動のクルマを意識したデザイン」がシリーズのマイルストーンになるということにめちゃめちゃ興奮した。

 何より素敵だと思ったのが、ホイールの構造だ。ブルーのパーツに装飾的なグレーのパーツをハメ込むことで、ツートンカラーのホイールになる。こうした試みは過去にもあったんだけど、最近のタミヤのカーモデルでも多用される「ホイールの塗り分けをパーツ単位でやってしまおう」という設計手法がフィードバックされてるんじゃないかな、と思わせるポイントだ。

1/24 フェアレディZのホイール。3層構造で煩雑なマスキングをしなくてもいいようになっている。

 ボディパーツの表面もシボ加工(表面に微細な凹凸をつけること)によって、上品なツヤ消しのグレーを楽しむことができる。このへんの「パーツの表面加工によって各部位のツヤをコントロールする」というのも、タミヤの最近のカーモデルで多用される手法。プラスチックのままでも質感の違いを楽しむことができるというのは、無条件で嬉しい。

 ミニマルな形状のパイロットも付属する。ハンドルにはモニターを表現したシールも付くし、バイザーやシートベルトもシールを貼ればそれっぽくなる。あまりにリアルな人形だと「どうやって塗ろうかな……」なんて身構えてしまうが、こういう記号化されたフォルムだと親しみやすく、自分の好きなカラーリングを投影しやすいという利点も間違いなくあると思う。

 VZシャーシ(2019年開発)を組んだのは初めてだが、モーターのマウント方法に剛性感があまりなさそう(こんな固定の方法でパワーが逃げてしまわないのだろうか?)な印象。とはいえ、これをギュンギュン走らせたいのではなく、フォーミュラEをイメージさせるカーモデルが部屋にちょこんとあるのが良いので、グリスアップもせずにシコシコと作っていく。

 ミニ四駆のスケールは1/32。手元にあった女性のフィギュアを横にチョンと置くと、案外カーモデルらしさが出てくるもんである。もちろん塗装やデカールワークによってオリジナルな一台を作り上げるのも楽しいだろう。「ミニ四駆、しばらく触ってないな……」という人も、「カーモデル、作ってみたいんだけどな……」という人も、エレグリッターの自由でスタイリッシュな雰囲気はとてもとっつきやすいはずだ。最新のスケールモデルの設計手法と最新のカースタイリングの思考法が合わさって生み出された、ミニ四駆のメモリアルな一作となるであろうこの製品。模型店で見かけたら、絶対に手にとってもらいたい。

 みなさんも、ぜひ。

<a href="/author/kalapattar/">からぱた</a>
からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。