この夏、僕の心に風が立った/ファインモールド 二郎の鳥型飛行機

 2021年8月27日、金曜ロードショーで『風立ちぬ』が放送される。

 実は同月5日と12日、終戦の日を前にTBSラジオにて「ラジオドラマ」という形で同作『風立ちぬ』が前後編二部構成で放送された。ジブリ映画『風立ちぬ』のプロットを踏襲したこの作品。僕はハガキ職人もやっている程度にはTBSラジオリスナーなので、当然この番組も聴いた。

 映画『風立ちぬ』は新入社員として社会に揉まれ、何も出来ない自分に失望しつつ鑑賞した作品なので非常に印象深い作品だ。映画館での体験を上書きしたくなくて、地上波で放送されていても観ることがなかったこの作品だが、ラジオドラマが僕の心を開いてくれたらしい。久々に27日の金ローで本作を観たくなった。

 そんな中、模型屋をプラプラしていたら『風立ちぬ』のキットに出会った。飛行機のプラモは先日一度組んだ経験があるだけだが、これを機に二度目の飛行機プラモ体験をすることに決めた。

 説明書を見て気づいた。何と本キット、スナップフィットだったのだ。飛行機のプラモは接着剤必須だという認識だったのでびっくり。

 本キット「二郎の鳥型飛行機」は、量販店などで「『風立ちぬ』のプラモあるじゃん!」と気軽に手に取ったプラモに馴染みの薄いジブリファンが帰宅して「え、このプラモ接着剤必要なの……」と絶望しないようにスナップフィットを採用したんだろうな。そんな予想を立ててホスピタリティを感じた僕は、名前は聞いたことはあるものの買うのは初めてなファインモールドというメーカーが一気に好きになった。

 箱を開けると真っ先に目に飛び込んでくるのは美しい白いランナー。鳥の羽のような形状をした両翼の端に合わせ、カクカクと階段状にリズムを刻むランナーの形が、「曲線」をこよなく愛した堀越二郎のパーソナリティと真逆なようで何とも面白い。

 宮崎駿監督は本来目では捉えることのできない「風」を描くことに長けたクリエイターだ。風を孕んだ帆のように豊かな膨らみを備えた翼は、確かにこのキットが「風」を描くジブリというスタジオの作品の立体物であることを示しているように感じた。

 キットには幼き日の堀越二郎のフィギュアが付属している。このフィギュアが何とも奇妙なプロポーションをしていて愛らしい。操縦席の小さな椅子に収めるべくキュッと細くなった下半身に比べ、上半身は膨らみをたたえた着物の緩やかなライン。そう言えば和装の人間のフィギュアが付属するプラモって珍しいのではないだろうかと気付き、ちょっと得した気分に。

 約一年前からスタジオジブリは作中の場面を静止画として無料公開してくれている。模型店でこのプラモを目にしたときから、僕はこの静止画の前で組み終わったプラモを浮かべたいと思っていた。

 二郎の真剣なまなざしはキット付属の未塗装のフィギュアには宿っていない。金ローを観た後に元気があったら二郎を塗装してみようかな。

 職場の休憩室でこのエントリを書いていたら、オルゴール調の「ひこうき雲」が流れてきて思わず耳を疑った。この夏、僕はとことん『風立ちぬ』にドップリ浸かる運命のようだ。

蒼人
蒼人

1989年生まれ。ゾイドとアメコミヒーロー映画が大好き。コロナ禍以前は毎週末映画館に行くのが楽しみでした。
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