スター・ウォーズのプラモが楽しい理由は「手を動かすダイナミズムへの最短距離」にあり。

 バンダイスピリッツのビークルモデルシリーズの美点はとにかく小さいこと。プラモの大きさというのは全長とか体積より、面積がいちばん重要な意味を持つと思っていて、例えば置き場所の問題がそれだ。これは専有面積(=フットプリント)の問題なので、体積や全高よりも「どれくらいの広さの置き場所を用意すればいいか」ということになる。また、色を塗るという行為も表面積の問題と直結している。大きさが2倍の模型は表面積が4倍になるから、単純に塗装にかかる時間は4倍になるというカラクリだ。(無塗装でカタチを楽しむのも良いが、)概してプラモは組んでいる時間よりも塗っている時間のほうが長い。面積は製品のフライトタイムに直結する。

 小さい模型だからといってパーツが少ないとは限らないし、「小さいからこんなもんでいいでしょ」というヌルい造形のプラモも昔はたくさんあった。けど、いまはどのメーカーも上記のようなパラメーターを理解した上で製品の仕様を考えているから、小さくてもゴリッとしたディテールが楽しめて、大きいモデルにひけをとらない視覚的な充足感のあるプロダクトが無数にある。そのなかでも組みやすさとディテールの確からしさ、完成した時の佇まいに至るまで、ひとつの頂点にあるのがスター・ウォーズに登場するメカを集めたビークルモデルだ。

 レイザークレストを組み立てている様子をTwitchで動画配信していたところ、コメント欄に「ビークルモデルのミレニアム・ファルコンは、ひたすらスミ入れしているのが楽しいプラモだった」という感想が流れてきた。

 まことにそのとおり。ビークルモデルはスミ入れされるために生まれてきたようなプラモだ。あんまり汚くすると小さな模型がクドく見えてしまうが、サラッとスミを流して、余分なスミ入れ塗料を拭き取るというアクションにそこまでテクニックは求められない。拭き取る面積も大したことはない。その手間の少なさに反して、効果は絶大だ。

 とくにレイザークレストのいいところは全体がほぼシルバーの単色であること。数少ない「塗り分けポイント」を表現するために入っているシールは窓をブラック・アウトさせるためのものと、焼け色が表現されたエンジンノズル、そして茶色いマーキングが入っていて、フィルムは透明だ。SWメカの伝統芸能である「機体の左右でマーキングの剥げ具合が全然違う」というのもこのシールからは一目瞭然。

 貼ってみれば分かるが、バンダイスピリッツが採用しているこのシールは曲面への追従性も高く、フィルムの厚みも押さえられていて透明度も充分。「デカールのほうがキレイに仕上がるよな……」と思っているあなたも、試しに貼ってみるべきだ。微細なスジ彫りや凸モールド、窓の曲面にもしっかりと追従して、ペロペロ剥がれてくるようなこともない。

 数手で組み上がり、その先にディテールが浮き立ってくるようなスミ入れの時間(本当に楽しく、模型全体の雰囲気が一変するのでとにかくスミ入ればかりするのが楽しいという人は少なくない)。ここにバシッと上質なシールを貼れば文句なしのレイザークレストが手に入る。従来のSWメカはわりと細かいステッカーを多用するものが多くてやや辟易とすることもあったが、マンドー君の愛機はそのデザイン面からも、一口サイズで濃厚な時間をもたらしてくれるのだ。

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。