伝説の巨大な飛行機プラモを一気呵成に完成へと導いた、オレンジ色の守護聖人。

▲ショットで飲むものといえばテキーラじゃなくてイエーガーという文化圏に生きてきました。

 プラモを作っていると、いつも脳内で小さな闘争が起きる。パッケージのイラストや説明書のきれいな塗装図を見て作り始めるもんだから「これを雰囲気よくトレースしてやろう」という自分と、「いやいや、せっかく自分でどうにでもできる遊びなんだから、敷かれたレールから思い切り外れたことをやりたい」という自分。

 「ゴールデンウィークだから」という軽率な理由で作り始めたエアフィックスの1/24 メッサーシュミットBf109Eは勢いでパーツを貼るところからスタートしたので、ここでバタッと手が止まった。本物のメッサーシュミットみたいにしようか、だとしたら説明書に描かれたパターンAとパターンBのどちらにしようか。一晩放っておいて、脳内でいろんなイメージをふくらませる。

▲どデカいプラモを貼る。それだけで楽しいのに、塗装のことを考えたらもうテンションが上がってしょうがない。
▲ここまで半日。さて、どんな飛行機にしようか。

 悩んだときは外をプラプラするのがいい。自転車を漕いで埠頭でマグロ丼を食い、ぼーっと海を眺めながらイメージを膨らませ、タミヤプラモデルファクトリーに向かう。たぶん、このときには勝ち筋の見えた棋士のように、もう迷いなく駒を進められるようになっていたはずだ。

 1/12スケールのポルシェ934に同梱されたデカールは、思ったとおり単品で棚の横に吊るされていた。イエーガーマイスター。狩人の守護聖人を意味するドイツのリキュールは、レーシングスポーツにおけるスポンサーとしても名高い。たまたま目に入った1/24のポルシェ934と、オレンジのスプレー缶も一緒にレジに向かう。まるでイエーガーマイスターのポルシェ大好き人間だ。

 「こちらのプラモデルは1/24で、こちらのデカールは1/12ですけれど大丈夫ですか?」とレジのスタッフに念押しされる。「大丈夫。オレが作っているのは1/24の飛行機ですから(いや、大丈夫か?)」と心の中でつぶやきながら頷く。どちらにせよ、「変なヤツ」の買い物になってしまった。プラモ屋さんのレジでレールを外れた買い物をするときは、いつだって恥ずかしい。

 ドン。できた。同じスケールのクルマと飛行機を並べて記念写真を撮る。オレンジのペンキをまとって、イエーガーマイスターのロゴが眩しい。惜しいのは、このド迫力と手応えと異様な存在感が写真では伝わりづらいことだ。

 組み立てに1.5日、塗装に1.5日。レールを外れる決心をしたら、あとは超速だった。10年前、どうやって作ろうか散々悩んだメッサーシュミットが、いま思いもよらぬカタチで目の前に完成品となって佇んでいる。ただ楽しみながら手の動くままに貼り、別のモチーフからリリックを借りてビートに乗せる。のびのびとした、5月の爽やかなプラモが完成した。かっこいいでしょ。

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。