突然、「メーヴェのプラモ、どんなんだっけ……」となった。いちど組み立てたことがあっても、漫然と組んだプラモというのはけっこう忘れる。だからまた組んでどんな気持ちになるのかを確かめたくなるんだよね。ということで、買ってきた。凛々しいナウシカ、白くてきれいな翼。
正直言って、メーヴェはすべてが翼のような機体だから、プラモとしてはあんまり味気のあるものではない……というか、組み立ての工程が複雑になりようがないところがある。これが戦闘機だったら、コクピットがあってエンジンがあってプロペラがあって着陸脚があって、表面にはリベットやパネルの継ぎ目なんかがあって、それなりのナルホド感というのがある。でも、以前このメーヴェを組んだときはたぶん「ああ、なんとなくメーヴェのカタチができるのね」としか思わなかったのだろう。細かいパーツの意味も取り付け箇所も、きれいサッパリ忘れていた。
たぶん、そういう味気のなさを補わなきゃと思った設計マンがいたのでしょう。エンジンを囲むダクトの外側に、ディテールが入っている。完成したら見えないところにも、謎のテクノロジーを感じさせる迷路のような彫刻が入っていて「あなたはいま、メカを作っているんですよ!どうですか、エキサイティングでしょう?」と言っているようだ。正直、パーツのハメ合わせは意外と頼りない設計なので接着剤を使ってピシッと位置を決めていったほうが隙間のないメーヴェになる。薄くて大きいパーツは歪みやすいから、黙って貼ったほうがいい。
どんな感触だったのかを思い出したくて、とりあえずサクッとナウシカも組んで、しばし腕組み。マジメにナウシカを塗っていたら時間がかかりそうだし、組んだ感触と、どんなカタチだったのかを思いだしたかったというのが製作の動機だから、机から離れたところにチョンと飾って少し遠目に見たときに「ああ、メーヴェとナウシカに見えるな」という雰囲気にしたかった。
手元にあった全日空のモヒカンブルー(以前、専用塗料が売られていたのだ)に少しシアンを足して、ナウシカをまるっと塗る。肌色のプラスチックが醸し出す生々しさは消えて、ビシッとナウシカらしさが出た。白と青のコントラストに、黄土色のテト。三色のバランスも、遠目に見たときの「らしさ」も気に入っている。
手で持ってくるくると回すと、パキッと真っ直ぐに伸びる内翼と、曲線的で下反角の付いた外翼が美しいアウトラインを描いている。1/20というスケール感も、ちょっといい。昔は同じスケールの仲間がそう多くはなかったけど、いまなら並べられるプラモもそれなりに多くなってきたしね。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。