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王蟲のプラモデルの内部構造に果てしない魅力を感じた話。

 バンダイのプラモデル、「王蟲とナウシカ」を組み立てました。もうね、傑作だったな……!という感慨しか残っておりませんよ。可愛さ、不気味さ、そしてユニークなパーツ構成の奔流が行ったり来たりして心に揺さぶりをかけてくる。道中で、「どうなってしまうんだこれは!」という驚きのあるプラモデルです。

 最初の組み立てで邂逅するのがワキワキ動きそうな前脚13本。よく見ると1本ずつ微妙に動きが違い、かつ穴の位置もまばら。恐ろしく躍動感がある。しかしこの線香花火みたいな説明書き、組み立て順に対する位置とパーツ番号の数字がとにかくバラバラすぎてちょっと笑ってしまった。

 軟質素材の後ろ脚(後ろ脚なのか!?)は、曲がり具合の違う脚が4種類あり、それが各13本で、計52本を自由に配置する構成だ。数字を書けばトランプができる。できない。数が多くて大変そうに見えるけれど、流れ作業でパチパチとカットして箱にあければ、あとはランダムにつまんで腹部に無心で差し込むだけ。大して時間のかかる作業ではなかった。偶然によってできた脚のリズムによって、ザワザワと蠢くような迫力が醸し出されるのが嬉しい。

 ちなみに脚の組み合わせについて重複順列の計算をAIにしてもらったところ、52!/13!*13!*13!*13!=53,644,737,765,488,792,839,237,440,000(5.3穣!)となり、天文学的なパターンの王蟲ができることになる。地球人口80億人が1人あたり約670京個手分けして作れば全てのパターンの王蟲が完成する計算だ。

 機関銃とアンカーフックまで付属しており、「3.5mmのドリルなどでオーム本体を加工すれば劇中のダメージを再現できます。」とのこと。かわいそうすぎません!?私には出来なかった。

 最大の見どころ、甲殻のディテールは生物的で素晴らしく、ハーモニー処理で「ゴゴゴ」と動く劇中の美術を思わせるような仕上がり。それと対照的なのが中央にある鉄骨の梁のようなフレーム。ここから放射状に伸びた支柱が甲殻の受けと見事に噛み合い、中空構造ながらもガッチリと組み上がる。

 合理的で、奇抜で、工業的で、生物的。プラモデルを組んでいく途中で現れるストレンジな景色としてはトップクラスのルックスだ。王蟲という非現実的(アンリアル)な存在に、王蟲として非現実的な構造を掛け算することで、こちらの世界にリアルが創出されたかのようだ。たまらなく美しい。

 王蟲のディテールを正中線でぶった斬るこの分割が、デメリットでもなんでもなく、このキットの魅力を増幅させている。これがなければ、まるで解剖図解よろしくのエキセントリックな光景には出会えなかったし、そして何よりこの次元の裂け目めいた空間に大判の甲殻をパチリと嵌めて王蟲の輪郭が出来上がる瞬間は奇跡のような煌めきだ。
 時々再販されるようなので、是非とも地球人口80億人に組んでもらいたい逸品だ。みんな670京個ずつ作ろう。

ハイパーアジアのプロフィール

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

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