光陰矢の如し! もはやノスタルジックを感じる「陸上自衛隊イラク派遣隊員の装備」をタミヤのプラモでじっくり眺める。

 自衛隊がイラクに派遣されていたのは、2003年から2009年にかけてのことです。つい最近のことのようですが、実はイラク戦争初期から6年間程度の間のこと。撤退したのすら10年以上前ですから、現在20歳前後の人からすれば記憶もおぼろげな時期ということになります。そんなに前だったっけ……?

▲大西先生はこんな迷彩をよく違和感なくカッコよく描きますよね……どうなってるんだ……

 そんな、最近のようで案外昔の、現用のようで現用じゃないちょっと現用なイラク派遣時の陸上自衛隊員の姿を立体化したのが、タミヤの「陸上自衛隊 イラク派遣隊員セット」です。箱絵にがっちり「ヒゲの隊長」らしき人が描かれているのが目を引きますが、ブーツが薄茶色っぽいのにも注目。普通は黒い革製半長靴を履いている自衛官ですが、イラク派遣時には砂漠の環境に合わせて「防暑靴4型」というデザートブーツを支給されました。この茶色っぽいブーツと随所に貼り付けられた日の丸が、「イラク派遣部隊でっせ!」と主張しております。

フィギュアの胴体はモナカのような前後割りなのだ

このデコボコがそそるんですよ
▲描くのを挫折しそうな日の丸や銃床のテープは、デカールが入ってて安心~

 そのほかにもイラク派遣部隊ならではの装備が満載なこのキットですが、構成はストレートに「フィギュア本体ランナー+装備品ランナー」というもの。フィギュアはほとんどまっすぐ立っているポーズなため、全員胴体の前後面と腕、頭という分割になっています。派遣部隊が着用していた防弾チョッキ2型は全面に装備品を取り付けるためのウェビングがあるのですが、そのモールドのことを考えるとこの分割は理にかなっていますね。デコボコしたウェビングや胴体前のチョッキの重なり具合など、「いろいろな部品が重なってますよ!」という彫刻がそそります。

▲この装備品ランナーがいろんな意味でアツい
▲今や世界のまともな軍隊はみんな歩兵に持たせている必須装備、ゴーグル

▲おなじみ89式小銃と88式鉄帽。実家のような安心感……

 そして大注目なのが、イラク派遣部隊の装備品がモリモリになったこちらのランナー。ゴーグルに無線機、小型マイクとレシーバーといった、現代の歩兵に欠かせない装備がゴロゴロくっついています。9㎜拳銃が収まっているホルスターもナイロン製のレッグホルスターであることが一発でわかる彫刻。偉いぞ~。

▲このちっちゃい部品が、イラク派遣部隊の証なのだ

 そしてグッとくるのが、自衛隊がそれまで使っていた官品の蓋つき弾納と形が違うオープンタイプの弾納、いわゆるイラク弾納が再現されているという点。この吹けば飛ぶようなちっちゃい部品がそれでして、先ほどのデザートブーツと並ぶイラク派遣部隊の特徴となっております。このポーチは防弾チョッキのウェビングに突き刺して固定するものなんですが、イラク派遣部隊ではどこに何を取り付けるかがそれほど細かく規定されていなかったらしく、けっこういろんな位置にいろんな装備を取り付けている自衛官が報道写真などに写っています。その辺を参考にしつつ「ここに弾、ここに無線機……」と考えながら装備品をくっつけるのも、このキットの面白さですね。

▲ヒゲの隊長……ではなく、「コマンダー」だそうです
▲チームリーダーであろう普通科の人。この人は拳銃持ってますね
▲周囲を警戒する普通科の二人。全身装備品まみれでゴテゴテだ~
▲アタックチャンス! なポーズのこの人は「別売りの軽装甲機動車の銃座に乗せよう!」というフィギュア。商売上手~!
▲オマケの110㎜個人対戦車弾(手前)とMINIMI(奥)もピリッとした仕上がり

 組み立てるとこんな感じ。ゴテゴテと装備がくっついているシルエットが、いかにもモダンな自衛隊のムード。ヒゲの隊長っぽい「コマンダー」は指揮官らしく装備品も軽め、一方で車両搭乗員や降車して周囲を警戒している人はガチガチの完全武装というコントラストがつけられていることがわかります。あと、コマンダーとなにか報告してるチームリーダーらしき人しか拳銃ぶら下げてないこととか、装備品を見るだけでなんとなく彼らの立場もわかりますね。

▲なんか、ちょっと懐かしい感じのフィギュアですね、これ

 しかしこうして組み上がったところを見ると、なんだかんだ言ってイラク派遣部隊って1世代前の装備をつけてたんだな~と思いますね。もうすでに防弾チョッキはこのフィギュアより新しい「3型」が支給され始めているし、第一線部隊の使っているアイテムはこの時点からかなり更新されています。さらに去年は30年ぶりに採用された新小銃である20式まで発表されたわけで、すでにイラク派遣部隊の装備はちょっとノスタルジックなものになっています。時間経過の早さに唸りつつ、実戦重視になった自衛隊の姿をじっくり眺める……。発売からちょっと時間も経って、そんな楽しみ方もできるキットになっているような気がします。

しげる
しげる

ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。