飛行機のプラモあるある早く言いたい。胴体の左右貼ってから主翼の上下貼って尾翼貼ってプロペラ付けがち〜。ってもう胴体の下面と主翼が完成しているパーツが出てきたよすごいねこれ。
胴体はどうなってるのかというと、これまた左右が一体で成形されている。すっごい肉厚でどうやって作ってるのかはよくわかりませんが、まあとにかく2パーツくっつけると「胴体に主翼が付いた状態」になります。その間、わずか3秒。
あとは小さいランナーが2枚入っていて、着陸脚とかエンジンとか水平尾翼などがパーツ化されています。これくらいのパーツ数なら「あっ!いますぐに零戦を塗りたい!」となってもどうにかなります。
ここまで割り切った設計だと、「ホンモノの零戦を再現する」という意味では確かに「ここが違う」「これが再現できていない」というレビューが出てきてしまうのもわかるっちゃわかるんですが、冷静に考えると零戦の細部がどんな形をしているのか、正確に知っている人のほうが少ない(あと、もっとパーツ数が多くて実物により近い零戦のプラモは他にゴマンとあるわけですから、ユーザーにはちゃんと選択肢があるはずです)。
精密再現を謳っているけどパーツ数が多くて怯んでしまうとか、あまりに繊細だから組んでいる途中で失敗してしまうというのはプラモあるあるで、「とりあえず零戦に見える手のひらサイズのプラモがスパッと15分くらいで形になるといいな」という一見無茶なアイディアに応えた結果がこのプラモなんじゃないでしょうか。少なくとも私は、「これくらいの手数で飛行機がいっぱい作れたら楽しいだろうなぁ」と嬉しくなりました。
当然コクピットが超精密に再現されているプラモもあるわけですが、どっちを選ぶかはあなた次第。正確なプラモと、すぐ作れるプラモ。役割が違う。私は今月のアーマーモデリングを読んで「今すぐ筆でなんか塗りたい!」と思ったから、この零戦をチョイスしたのです。プラモを作り始めるときに一番効くのは、衝動だもん。
たった6パーツで「士の字」(飛行機の胴体に主翼と水平尾翼がくっついた形を上から見た状態)になるんですから、あとは楽しい筆塗りタイム!エンジンとかカウリングはあとで塗るぜぃ。
ゲートの処理も合わせ目消しもほとんどせずに、「ああ、いまオレは飛行機を筆塗りしているぞ!」というゾーンに待ち時間なしでスッと入れるこの感じは、まるでディズニーランドのファストパスのよう。
筆で塗り塗りしながら「ああ、やっぱりムラがあるって面白いなぁ」なんて思い、「ここからどんな色をチョイ足しすると味が出るかなぁ」と妄想しながら、まずは机の端にコトリ。気が向いたときに手にとって、ちょっとずつスパイスを足しながら、コクと旨味に溢れたカレーのようにコトコトと仕上げていくことにしました。
プラモは足し算と引き算の遊び。どこまでもホンモノに忠実な形状を再現しようと思えばホンモノと同じ大きさ、同じパーツ数になるのが道理ですし、ホンモノの印象をざっくりと大掴みに表現しようとすれば、こまかなディテールの再現を諦めなければいけないところもあるでしょう(だからこそ、「その間のどこでバランスを取るのか」が楽しいのです)。
飛行機を組んでみたいけど、なんだかおっかない……と思っている人がもしこの記事を読んでいたら。こんなに愉快なプラモもあるんだよ、ということをお伝えしておきます。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。