プラモを作っていて「ちょっとだけ作業して劇的にいいことがある」っていうの、すごく嬉しいですよね。色塗った!カタチちょっと変えた!みたいな、「オレのはアイツのとは違うんだぜ……」と言えるポイントがあると、一気にプラモを買って組んだ意味がモリッと立ち上がります。
で、これがパーツめっちゃ多いと組むだけでアップアップだったり、色塗るところまでたどり着けないとか、なんかひと工夫してやろうと思う前に体力が尽きちゃったりして「まあ、このままでいいか……」みたいになります。とくにオレはしょっちゅうなる!!
パーツが少なくて、ドカーっと組み上がるプラモの最高なところは「できた!でもまだ体力があるぜ!ここからどうしようかな?」と思えるローカロリーさ加減。BANDAI SPIRITSのエントリーグレード ウルトラマンゼロは、たった28パーツでビシッとかっこいいポーズで固定されたウルトラマンゼロが「それなりの色分け」で組み上がるところがすばらしい。
左右非対称な姿で有機的なラインと装飾的な色分けを再現するために、分割はかなりトリッキーで「これは3歳のお子様だとちょっと難しいかも!?」と思えるような、絶妙な歯ごたえ。大人でも当てずっぽうで組もうとすると「ありゃ?」と戸惑うようなパーツもあるので、仕事とも息抜きとも違うプラモ特有の愛しい時間が流れます。
「それなりの色分け」と書いたのは、こうして細部の色分けを実現するためにシールが入っているから。これを貼ってみようと説明書を眺めればわかるのですが、「うーん、これならシールじゃなくて自分で塗ってもいいなぁ」と思えるくらいのボリュームと、塗り分けの難度設定がされている(ように感じる)のです。
キットでは青いパーツだけど銀であってほしいところは「ぺんてる 銀の穂」や「マッキーペイントマーカー シルバー」なんかを使えばかんたん&きれいに銀色になるでしょうし、キットでは銀のパーツだけど青くあるべき場所は「シタデルカラー マクラーグ・ブルー」あたりを使うとすごく良さそうです。
ものすごくたくさんの作業の上にある「さらなる高み」と、あっという間に形になるプラモに残された「ちょっとした工夫の余地」。一見同じようですが、やっぱり作る人のモチベーションや使える時間はとても大事で、「あ、ここ少し塗ればもっと良くなるな!」と誰もが思えるような「それなり具合」というのがこのプラモにおいてすごく心地良いポイントなのです。
お子様と楽しむときはシールで/プラモに興味が出てきたオレは部分塗装で/腕試しをしてみたいオレは全塗装で……と、「誰向けに設計されているか」を気にせずに自分に合った楽しみ方ができるのがエントリーグレードのいいところ(ポーズがかっこよく固定されているのもイコールコンディションで遊べる大きな要素だと思います)。
この「簡単だけどちゃんと懐の深いウルトラマンゼロ」を素材として、ただ組んで充実した時間を過ごすもよし(これもめっちゃ楽しい!)、なにか新しいテクニックやツールを試してみるもよし、ひとつ新しいプラモタイムのお供にしてください。
みなさんも、ぜひ。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。