さまざまな模型がありますが、大きく分けると乗り物と人といった風に分けられると思います。そうした場合に人が持つ魅力というのは乗り物とは異なるものです。精密にパシッパシッと形が決まって精悍な姿の乗り物が出来上がるというよりは、少し曖昧で柔らかな姿が誕生します。
なのでパーツの付きかたも、一部のものを除いてほとんどは特にガイドもなく曖昧な感じ。乗り物とは全然違いますね。とはいうものの、組み立ててみるとこの感じがクセになります。曖昧ながらも緩やかに、そして確実に人が誕生する様子は合気道の達人のような、海図を持たずに島々を渡る船のような絶妙なバランス感を感じます。
これらの人々と、戦車や飛行機などの精密なプラモデルを同じメーカーが出していることや、どちらも「プラモデル」と呼ばれること、場合によってはその2つが1つの箱の中に同梱されていることに驚きます。
今回私がチョイスしたのはMiniArtの1/35 ドイツ人駅員4体入( 1930-40年代)ですが、彼らは軍ではない別の職業に属している点が特徴で、制服もなかなかにおしゃれです。出来上がったあとに醸し出す雰囲気も当然ながらミリタリーではなく、ワーク(=労働)なので少し穏やかな雰囲気なのも特徴でしょう。もしかすると世界の車窓からなどでこういった昔の制服を着た人たちが勤務する駅や路線が放送されているかもしれません。
一番のお気に入りはスコップを持った人で、特徴としてはシャツ襟のカバーオールではなくジャケットを身につけていて、シャツはスタンドカラーでベストを着用している点。
スタンドカラーのシャツは伝統的な服装術からするとネクタイをしなくても良い襟型のシャツであり、シャツそのものが元来下着とされていた背景もあるのでジャケットを脱いだときにシャツ一枚にならないようにということでベストを着ている、あるいはそのマナーが形式的に制服に継承されている点が服装に生きているのが面白いですね。軍服とは違う観点から服装を見ることができる楽しい人物と言えるでしょう。
また、この服装でスコップを持っているという点も良いと思います。前屈みになることで垂れ下がるジャケットの前見頃が動きを感じさせてくれる良作です。
プラモデルとしてはサイドメニュー的な存在になりがちな人ですが、その特性を活かしてお気に入りのポストカードやプライヤーのサイドに配置すると、とても生き生きするので素敵な一区画を部屋に生み出す誰かを模型売り場の棚から探してみると楽しいと思います。
1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。