
艦船模型は他のスケールモデルにはない独自の精密さがあると思っている。ただ、熱心に作り続けてるわけではないので、どーんと大きな魅力を話すことはできない。それでもピンセットで甲板上に微細な部品をひとつずつ配置していく時間はなかなかない緊張感。
タミヤの1/700 暁は艦船模型の中でもかなり小さい駆逐艦を立体化したもので、パーツ数も少ない。数年に一回くらいのペースで船のプラモデルを作るものだから、毎回作りやすそうな小型のものを選びがち。しかし艦船模型の売り場は箱の大きさの大小の差が激しくて、ついつい大きいものにはビビってしまう。ただ、塗ることで感じた印象から「もっと大きい船を塗るとどうなるんだ……?」という好奇心も生まれる。

それに、一気に仕上げようとすると極小のパーツはどこかに飛んでいくから休憩のタイミングも重要で、なんというか「作る」の中に「休む」がしっかり含まれている点が癖になる。今まで数えるほどしか作ったことはないけど、それでもプラモデル売り場で手に取ると、あの時間に再会できる気がしてしまうくらいには忘れ難い魅力がある。
短い期間でいくつもの艦船模型を作るということはせず、思い出したように買っては作るを繰り返しているので、組み立てる際の感覚は毎回の制作ごとに「あー、そうそうそう」と思い出されるような感じ。歯車のようなギザギザとしたパーツが気づけば艦橋として立ち上がる瞬間は、毎回毎回「そんなことになるのか」と驚く瞬間だ。

この「歯車が艦橋になる!」みたいなプラモデルのマジックは1/700といった船ならではの大きな縮尺の世界だからこそ起きる面白さだと今回ようやく気づく。人の目で捉えられる情報量と、模型としての見た目というバランスの中で生まれたアイデアというか。
艦船模型は完成した姿は細長く、遠目にはやや存在感が薄いような気がしていたのでドライブラシなどで陰影を際立たせることで、遠くからでも輪郭が浮かび上がるような仕上がりを考えていた。しかし、実際に筆を動かしてみると、過度にエッジを強調しすぎるよりも曖昧な陰影が残っているほうが、全体像を掴みきれないスケールの大きさを表現できているような気がした。

1/700にして20cmくらいの全長、原寸にしたらとても大きい。そんなサイズのものを前から後ろまでシャキッと目で捉える機会なんてなかなかない。ピンセットを使うような精密な作業が続くかと思ったら、塗装では曖昧なぼやけた雰囲気を生み出す……ということで、繊細さを霧に包むような工程が巨大さの演出に一役買っているのが本当に面白かったし、次はもっとデカイやつを!という気持ちが生まれたのがとても良かったです。