
タコムは、さまざまな戦車のプラモデルを発売しています。内部再現込みの特濃アイテムや、架空戦車に半分突っ込んだようなマニアックなアイテムまで、国や世代を問わず幅広いラインナップ。そのなかでも、手早く作れることをウリにしているのがブリッツシリーズです。こまかいバリエーションの再現や内部構造は置いておき、パーツ数を必要最小限に絞り、素材もなるべくプラスチックに。シンプルに組み立てが進む内容になっています。

そこからさらに研ぎ澄ましたのがスーパーブリッツで、パンターG型が発売されています。今回のパンターFは、そのG型のパーツを使いつつ、あらためてF型を作ったという内容。パッケージの絵や完成品を見るとよくわかりますが、F型の砲塔はそれまでのパンターとはまったく違う、「シュマールトゥルム」というものに変わります。戦車といえば長い砲身があって、その根元では砲塔の前面を防盾が覆っていて……という構図も一変。砲身の根元は、突撃砲にも似たザウコプフ形式のすぼまった形になっています。つまり顔がぜんぜん違う。パンターと聞いて想像する姿ではないのです。

砲塔のパーツも、それまでの台形をした四角いものから、先細りの形状に改められました。これがシュマールトゥルムと呼ばれる砲塔。前後が別パーツになっていて、その先に新しい主砲がつながります。こちらのランナーには新しいパーツがまとまっていて、砲塔以外にも、ちょっとだけ形の変わった後部の雑具箱などが入っています。車体前面の機銃も、StG44かMG42になったのでしょうか。従来のMG34より細く、小さいパーツに置き換わっています。

G型では3Dプリント製だった赤外線暗視装置もプラスチックパーツになり、組み立てて取り付けることができます。砲塔のハッチを開けて取り付けるので、閉じる場合には使えません。とはいえ、こちらもドイツの先進テクノロジーらしさを感じるパーツ。やはり組んで楽しみたいアイテムです。

追加されたのは、新しいF型砲塔用の装備だけじゃありません。パンターG型でも使われた鋼製転輪も入っています。元の転輪も入っていて、そちらはスーパーブリッツらしく、4つがつながった組み立て速度重視のパーツ(G型を紹介した以下の記事リンクを確認してね)。一方、鋼製転輪はすべて分割されています。F型ならどちらもありえた姿なので、好きなほうを使ってよいでしょう。

一方、砲の上にあるひさしのようなパーツはエッチングパーツになっています。薄さの表現としてはよいのですが、スーパーブリッツどこいった、という気持ちになります。まあ、曲げて接着するだけと言われればそうですが……。


車体はG型同様、サスペンションアームが車体と一体化されているので、迷いなく転輪を取り付けられます。そのあとは履帯。歯車状の起動輪の内側にガイドがついていて、最初に取り付ける上側の履帯の位置を決めてくれます。多くの戦車プラモデルでは、実物の戦車と同じように、誘導輪の位置を調整して履帯の長さや張りを合わせます。しかし、このキットでは、そうしたちょっとした職人的作業は必要ありません。とにかくキットを信じて巻くのです。接着剤の乾燥を待ちたいので、スーパーブリッツとはいえ、ここでいったん作業を止めて寝ました。残りは2日目に組み立てて完成。組み立て自体は10時間前後で終わっています。

完成すると、やはり独特のシュマールトゥルム砲塔が目を引きます。この砲塔がすごいのは、側面に耳のような出っ張りがあり、ここにステレオ式測距儀を搭載する計画だったこと。ドイツ軍の戦車としては初の試みで、戦後の戦車にも採用されたシステムです。ただ、この測距儀も生産に至る前にタイムリミットが来てしまいました。また、主砲も7.5cm KwK44/1 L70に変わり、マズルブレーキがなくなっています。小さな砲塔に合わせて駐退機などの方式も変更された、まさにF型のための主砲でした。

実際のF型は実戦投入されることなく、車体と砲塔が一緒になることもありませんでした。模型では、どこまでも完全体のF型のロマンを追求するか、G型のプラモデルの延長として、ありえた姿を作るかという選択があります。今回のキットはG型の車両をベースにした、もっともありえそうな姿になっています。

この独特のフォルムは、パンターの印象を一転させます。さらに、そこに搭載されるはずだった砲やシステムにも目を向けると、そのテクノロジーの高さにはやはり驚かされます。謎とロマンあふれる兵器として人気は高く、現在ではゲームなどで、完成形の「つよパンター」として活躍。そんな秘密兵器の姿を楽しむのに、これ以上ふさわしい模型はないでしょう。