
プラモデルってめちゃくちゃおもしろいんですが、それは組み立てる喜びとか完成して褒められて嬉しいとかだけじゃなくて、「なんか良く知らないものと軽率に触れ合えるところ」にもかなりの比重があります。プラモデルになるものはだいたい、日常生活ではなかなかホンモノを見られないモチーフか、あるいはすでに(あるいは「まだ」)この世に存在しないものばかり。じゃあ日常に溢れているものなら良く知っているのか……というとそうでもないんだなということに気付かされるわけです。たとえば自動販売機。

ハセガワから新しく発売されたレトロ自販機シリーズ最新作、「瓶ジュース」は1/12の可動フィギュア用アクセサリーとしてラインナップされたもの。前面のパネルだけ新規設計でこれまで大量に発売されてきたレトロ自販機のバリエーションかと思ったら全然丸ごと新規金型でビビりました。売れてるんだなぁ……。

コイン入れてボタン押して扉を開けてビンを一本引き抜くタイプの自販機、見たことあるっちゃあるけどもう絶滅危惧種だし、たとえばプラモデル的な作法として「プラスチックの色を活かして組み立て、部分塗装で実感を盛り上げ、最後にサビを書き込んだりしてリアルさを追求しましょう」みたいなことで片付けそうになりますが、ちょっと待てよこの自販機というのはそもそもなんなんだ。なんなんだと言っても調べようがないのでインターネットで検索するしかない。

コカ・コーラ社が自販機の歴史を語るページがあったかと思えば、世の中にはレトロ自販機の研究をしている人がおり、オークションの市場もちゃんとある。ああでもないこうでもないといろいろ読んでいると、Vendo社に始まる飲料自販機の普及と発展、そして日本市場における主要なメーカーと進化系統図がだんだんと飲み込めてくるわけです。斜めになった収納/冷却部と丸い開口部、コインを入れる場所の位置をはじめとした筐体の特徴を突き合わせていくと、なるほどこのプラモデルはアメリカのVendo社からライセンスを受けた三菱重工が国内向けに製造・供給していたボトルベンダー「VF56E」に酷似しているな、ということに行き着くのでした。

じゃあVF56Eの実機そのままに塗装してディテールアップしましょう……みたいな話をしたいのではなく、眼の前にあるプラモデルが何を模しているのかを知るというのはプラモデルが持っている役割のかなり重要なところであり、世の中にはどんな分野にもマニアがいて、そこには膨大な知があり、それを調べたり読んだりすることで己の世界を見る目が変わっていく、というところが超おもしろいじゃありませんか、というお話。

「映え」や「フィギュアの小道具」、あるいは「なんとなく懐かしい雰囲気」を消費するためのツールとしてプラモデルはとても有用です。しかしその奥にはメーカーが取材し、ディテールを整理し、手軽なキットとして目の前に提示してくれた造形があり、その分野を誰に頼まれるわけでもなく突き詰めて探求している先人がいる。全く知らないものはもちろん、知ってるつもりで知らないものにもアクセスし、その鍵を渡してくれる知のポータルとして、プラモデルは今日もいろんなものをモチーフにしておるわけです。そんじゃまた。