
飛行機模型を組んでいて、とりあえず主翼と尾翼がくっついて飛行機らしい形になった状態をそのカタチになぞらえて「士の字になった」(ある程度全貌が見えた、の意)と呼ぶことがあります。今回は、士の字になったときのカタルシスをこれ以上ないほど楽しめるプラモデルのお話。
ポーランドのアルマホビーから1/72スケールのP-51マスタングがバラエティ豊かなラインナップで発売されています。2021年に発売されたB/C型とそのバリエーションを皮切りに、2025年には待望のD型が新規開発され、プロペラを変更し多くが偵察型に改造されたK型もその仲間に加わりました。

ぶっちゃけキットの内容はものすごく神経質なパーツ分割で、1/48でも見たことないような強烈なこまかさ。さらに各所のディテールや生産時期ごとのこまかな違いを再現するためにものすごくトリッキーな組み立て方を取り入れているため、ただ単にマスタングのカタチを見たいだけならハセガワとかタミヤのプラモデルを買ってきたほうが10倍くらい早く組み上がります。でもね、このパーツがあるというだけでチャレンジしたくなっちゃうんだわ……。

透明なワク(ランナー)の端っこにおよそ飛行機模型のパーツとは思えないカタチのフレームみたいなものがあり、これを組み立てると着陸脚の位置や角度を決定するための台(=治具)になる、と説明書に書いてあります。なんだそれは。絶対使いたいじゃん。

飛行機模型の着陸脚って接着面積が小さい上に接着剤が乾燥する前に負荷をかけるとグニャッと角度が変わってしまったり、結構神経を使うところ(なのでノリシロをデカくしたり差し込み方を工夫したりと各社腕の見せどころでもあります)。アルマホビーはその工程を治具で持って安心確実なものにしようと考えたわけですね。

それにしてもああ!もどかしい!この緻密すぎるコクピットやラジエーター周りの工作にどんだけ時間かかるんだ!いったい何パーツあるんだ!はやく士の字になりたい!主翼も中身の桁とか上下の貼り合わせとかがかなりナーバスだし、尾翼もすごく複雑な分割で(組んでてめっちゃ面白いんだけど)とにかく手数が多い。でもパーツの精度は高いからおもしろいよ。
そしてついに士の字の瞬間が訪れ、主脚を貼る段が来ました。1mmあるかないかの軸を飛行機の腹にちょんと接着してから……

マスタングを治具の上に乗せると、機体が水平に保たれた状態でタイヤが治具の凹みにスコッと吸い込まれました。この状態で一晩寝ていれば、明日の朝には接着剤が乾燥し、着陸脚がパーフェクトな角度で固定されているという寸法。たったそれだけのことだけど、しかし見た目にも機能にも異様な魅力があります。トンと置けばスコッと決まる。この気持ちよさを体感するために買い、組んでいいと思います。みなさんも、ぜひ。