
いまから42年前のプラモデル。日本人が重戦機エルガイムを観てワクワクしていた時代。400cc以上のバイクに乗るには合格率1%と言われた一発試験を受けるほかなく、バイクメーカー各社が400ccまでのマシンをひたすら売りまくることに注力していた。そんななか、ヤマハのバリバリのワークスマシンであるYZR500(0W61)と並行開発されたレーサーレプリカが登場した。RZV500Rである。最高速230km/hだってさ。誰が乗るんじゃこんなもの。
正直言って私はフルカウルのバイクというものにあんまり興味が持てず、しかしバイクにもいろんな種類があってそれぞれに歴史があり、ストーリーがあるのだということをおぼろげながらに理解し始め、せっかくタミヤから古いキットが再販されるのであればそれをちゃんと味見することにしたのだ。それによって私が生まれた頃のバイクやタミヤがどんなものだったのかを感じ取り、同じような境遇の人と意見を交わし、「当時のことを知ってる人」以外にも語れる場が作れればいいなと思っているのである。ささやかですけど。

80年代のタミヤのバイク模型というのはマジでパーツが少なく、本当にこんなんでバイクになるのか?なんか足りないんじゃないの?と思うほどである。実のところ超最新のタミヤ製Honda CB1000Fもべつに大まかな構成は変わっておらず、塗り分けがしやすいように考えられた分割を取り入れてみたり、バイクのキャラクターを決める細部のパーツが詳細になっているくらいのもんだ。バイクというメカの原理原則は昔から大して変わってないから、いきなりパーツが何倍にも増えたり、まったく違う組心地になったりしないのがおもろいところなのである。

パーツをまじまじと見ていると、「たしかに頑張れば組み上がるでしょうけども、本当にこの手順で昔の人は組み立てられたんですか?」「模型専門誌を読み漁っていればなんとなく見えますけども、当時のバイクキッズはここの塗り分けをどうやってクリアしてたんですか?」みたいなところがたくさんある。根性とか練習みたいな言葉で片付けることもできるんだろうけど、実際のところ、「上手く作る」というのはめちゃくちゃハードルが高かったんじゃないのかな……なんて想像したりもする。デカールは現代的な質の良いカルトグラフデカールになってるけど、これを受け止める塗装の手順なんて、いまの俺でもちょっと怯んでしまう難度だ。

そこで説明書を読み、気づくのは「ちゃんと2026年のツールとマテリアル、その操作方法が解説されている」ということだ。1984年の発売当時にはなかった接着剤や塗料、その使い分け方法がじつはしっかりと書かれている。バイク模型においては美しくカウルを塗り上げることもそうだが、さまざまな質感の金属を自分で調色しながら塗り分けるのが腕の見せどころだった。いまはアルミ、ステンレス、チタン、鋳鉄、その他いろんな色味とツヤのメタリックカラーが発売されおり、こまかく塗り分けの指示も入っている。透明パーツが濁らないように貼れるシリコーン系の接着剤もタミヤブランドできちんと発売されていて、「ここで使うのだ」と明示されている。

古いプラモデルを作るのは、その時代のメカを知り、その時代のプラモデルメーカーの実力を目の当たりにする良い機会だ。同時に、いま僕らが手にできるツールやマテリアルがそのときからどれほど進歩したのかを体感するチャンスだ。タミヤは古い説明書をそのままにせず、こうして再販するときに最新の環境にアップデートした「作り方」を提示してくれている。もちろんそれでプラモデルが劇的に簡単になるわけではない。しかし、当時のモデラーが知れば地団駄を踏んで悔しがるような素晴らしいツールとマテリアルに囲まれているのだよ、ということを古いプラモデルのリバイバルで教わるのはなんだか嬉しい。もし昔ながらのやりかたでなんだかうまくいかないなと思っている人がいたら、ぜひともまっさらな気持ちで説明書を読んでほしいと思うのだ。