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【レビュー】オープントップに欠かせない「密度俳優達」に迫る!/ タミヤ 1/35 ソビエト自走砲SU-76M

 オープントップ自走砲(屋根がないタイプの車両をオープントップと言います)における「タミヤの密度」を、コンパクトな車体で存分に見せてくれる「SU-76M」。その密度をさらに深めてくれるのが、本キットにセットされている「名優」とも言える乗員達なのです!

 グリーンの車体に対して、グレーの成型色によって表情や衣服の造形に生じる影をしっかりと見ることができます。主張し過ぎず、しかし自走砲本体とは同一ではない成型色の組み合わせによって、車体のディテールと人物それぞれが引き立っています。素組み状態で楽しむ際の満足度もより高いです。

 まずはコマンダーから。コートの間から覗く内側も抜かりない造形。今も続く接着箇所が目立たない良質なタミヤフィット。

 シートに片膝をつき、体重を預けながらペリスコープを覗くという絶妙なポーズながら、戦闘室内部にピッタリと合わさるようになっています。タミヤの他キット付属のフィギュア同様、設計者のこだわりが感じられるポイントです。

 砲弾を抱えるローダー。砲弾は自走砲側ランナーに成型されているものと共通。把持する指先や各部のシャープさ、膝で砲弾の重量を支えながら次弾装填に備える臨場感に溢れたポージングとなっています。

 3人目はガンナーです。主砲の操作機構に手を添えながら発射の号令を待つ姿。衣服の縫製によるラインと交差する厚みのある皺の造形が際立っています。

 各乗員がより明確に三者三様の顔の骨格・表情となっているのも、他のモチーフ以上に乗員が重要な要素となるオープントップの自走砲ならではかもしれません。また、多様な地域の人々が従軍したソ連赤軍というモチーフの背景も盛り込まれてるように感じられました。

 タミヤのソ連戦車兵で今やお馴染みとなっている戦車帽の分割、本キットでも覆い隠される頭部の量感に抜かりはありません。分割とすることで戦車帽の立体的な入り込みなど、形状がしっかりと再現されています。

 あっという間に乗員達が組み上がり、戦闘室にジャストフィット!3人が乗り込むとこの凝縮感、車体のコンパクトさを実感させてくれます。乗員個々の造形の見所に加え、自走砲の硬質感と乗員の衣服といった質感のコントラストが、キット全体の密度、そして臨場感を高めています。

いわゆる戦車におけるハッチから身を乗り出した乗員や、歩兵を車上に跨乗させるのとはまた異なる風景を見ることができるオープントップ自走砲というモチーフは、タミヤのこだわりによってその最適解に到達したと言うことができるでしょう。互いに欠かせない自走砲と密度俳優達の関係性、「SU-76M」はそのコンパクトさに加え、タミヤ製ということで手に取りやすく、単体の箱庭として楽しんだ先にはジオラマ表現など次のステップへの扉も開いてくれる示唆に富んだキットです。ぜひみなさんも、密度俳優達を通してタミヤのオープントップ自走砲ならではの一体感を楽しんでください!

大森 記詩のプロフィール

大森 記詩

1990年生。彫刻家。美術大学在籍中から模型誌作例や作図などに携わる。現在は作家活動と並行しながら主に筆塗り作例を担当。合わせてミキシングビルド/キットバッシングによるSFメカニックを月刊ホビージャパンを中心に発表している。

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