
先日、家族で小豆島へ行きました。瀬戸内の穏やかな景色の中でのんびり……のはずが、子どもたちの「ここ行きたい!」で急遽立ち寄ったのが、ちょっと変わったミュージアム、妖怪美術館です。
場所は「迷路のまち」と呼ばれる土庄本町。約700年前、戦乱や海賊から身を守るために作られた、不規則に入り組んだ細い路地が今も残るエリアです。その独特な街並みの中に、元呉服屋の蔵や倉庫といった古い建物を活かした展示空間が点在し、妖怪美術館は01から04まで複数の館に分かれて展開されています。
館と館を移動するたびに、迷路のような路地を歩く。気づけばそれ自体がひとつの“展示体験”になっているのが面白いところでした。妖怪を見るために歩いているのか、それとも街に潜む何かに誘われているのか……そんな不思議な感覚を味わえる場所でした。

そのお土産売り場には、妖怪談義を記した民俗学者・柳田國男生誕の地である兵庫県神崎郡福崎町が地方自体初のプラモデルとして展開した「福崎町妖怪プラモデルNo.1 河童のガジロウ」が売られていました。妖怪美術館で“妖怪の気配”をたっぷり浴びた直後に、この箱と出会ってしまったのです。これはもう、買う理由しかない。いや、むしろ買わない理由がない。気づけばレジに持っていっていました。こういう“体験の延長線上にあるお土産”って、やっぱり強いんですよね。

しかし、旅行から帰ってきてすぐに作るわけでもなく、そのままプラモストックへ。いつものように「そのうち作ろう」と思いながら、箱は静かに積まれていきました。そんなある日。娘がふらっと僕の部屋にやってきて、棚に目をやると、あの河童を見つけました。
「おとうちゃん、これオリーブの場所(小豆島はオリーブが名産)で買ったプラモだよね。作りたい!」
小豆島の記憶と一緒に、その箱をちゃんと覚えていたのです。ちょうど娘は、アオシマのすみっコぐらしのプラモデルを作ったばかり。どうやらその楽しさがまだ体の中に残っているらしく、プラモ熱はしっかり継続中。しかも今回は「色も塗りたい」ときました。僕のシタデルカラーボックスを開けて、あれこれと色を選びはじめる娘。そして、いよいよ筆が動き出しました。

「どんどん色が変わる〜〜。おとうちゃん、楽しいね〜」と夢中で筆塗り。筆の洗い方とかだけ教えたら、あとはフリータイム。自由に楽しんでもらいました。その間にも「小豆島きれいだったね」と旅の思い出に花を咲かせるのでした。

そして完成した河童がこちら。娘にとっては、これが初めての“全塗装プラモデル”になりました。
「カエルみたいに、肌に点々をつけてみたよ」
そう言って見せてくれたその表面には、彼女なりの観察と工夫がしっかり詰まっていて、思わず見入ってしまいます。教えたわけでもないのに、“らしさ”を自分で見つけて塗っている。その姿に、ちょっとだけ驚かされました。小豆島で買ったあの箱が、こんな形で完成するとは思っていなかったけれど、だからこそ余計にうれしい。プラモデルって、やっぱりいいな。そう、しみじみ思ったのでした。

「妖怪さんがいっぱいいた場所は、ちょっと怖かったよ。暗いしね〜」
出来上がった河童のプラモデルを手にしながら、そんな感想をぽつりと話す娘。あの迷路のような街や展示の空気が、ちゃんと彼女の中に残っているのがわかります。そのあと、お母さんにも完成したプラモデルを見せて、「すごいね〜」と褒められている様子もまた、なんとも言えず心温まるものでした。旅先で買ったプラモは、そのときの空気や景色、感じたことまで一緒に立ち上がってくる、ちょっと特別な存在です。
もしあなたの旅行カバンに少しだけ余裕があったなら。そんな出会いを、ぜひひとつ連れて帰ってみてください。きっと、帰ってからも旅は続きます。