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人がいる展示は、こんなにも面白い。名古屋「トヨタ産業技術記念館」で体感する1/1スケールの情景

 戦車や車のプラモデルに人や動物のフィギュアを添えると、景色が一気に生き生きと立ち上がってくる。そんな“情景の力”を、展示の世界でも感じさせてくれる場所が名古屋にありました。「トヨタ産業技術記念館」。ここで体感したのは、“人がいる展示は、こんなにも面白い”という驚きです。

 この記念館は、トヨタグループの創始者・豊田佐吉が明治44年に織機の研究開発のために建てた試験工場跡地にあり、大正時代の工場を産業遺産として保存した美しいレンガ造りの建屋を活かした空間づくりがされていて、エントランスから気分が上がります。

 館内は「織機」と「自動車」の大きく二つのエリアに分かれ、トヨタグループの“ものづくり”の歴史をたっぷり味わえる構成。展示物はもちろん膨大。でも、この館がすごいのは、「人」や「人形」が展示に添えられていることで、それぞれの技術や機械が“動き出す”ように見えることなんです(実際に動いているもの、実演も多数)。

 織機のコーナーは見たことがない、触れたことが無い世界の連続で大興奮。スタッフの方が目の前の機械を動かしながら丁寧に解説してくれるものもあり、より魅力が伝わってきます。しかも英語でも対応されていて、「なんて神なんだ……」と唸ってしまうレベル。海外からのお客さんが多いのも納得です。

 ただ置かれた機械ではなく、人が関わることで、展示そのものが「わかりやすく」「面白く」なる。プラモデルで情景を作る時に感じる“人の存在の大切さ”と、まさか博物館でシンクロするとは思っていませんでした。

 そして館内は「1/1スケールの情景」がそこかしこに見受けられます。これこそトヨタ産業技術記念館の大きな魅力です。織機を製造したりメンテナンスしたりしている荒削りのアニキ達に目が釘付け。分解されたパーツや使用する工具なんかも綺麗に展示されており、ひとつひとつ見ていたら何日かかるんだ! ってくらいの充実ぶりです。

 あまりにもエキサイティングな部屋がこちら。「金属加工技術の実演」です。スケジュールごとに「鍛造」や「切削」などが人の手によって行われ、公開されます。工場で実際に行われていることを、ミニマムスケールにして実演するのですが、それでもすごい迫力。そしてスタッフの手際の良さに、「職人ってすごい」と唸ってしまうのです。

 僕が見たのは鍛造。プレスの迫力に、一緒に見ていた息子もビビっていました。

 織機が「豊田佐吉」なら、自動車は「豊田喜一郎」(トヨタ自動車創業者)。自動車館の始まりは、いきなりのエモさ……。小さなエンジンの開発というはじめの一歩を、ここでも1/1スケールの情景で魅せてきます。

 歩みを進めるたびに、規模は大きくなり、最後には作業用ロボットのデモンストレーションまで公開されています。そして多くの場所には、メインの展示物の魅力を引き立てる「人」と「人形」が配置されています。トヨタグループが産み出しているものは「人」の手によって送り出されている……そしてその魅力・歴史を「人が伝える」。その構図が、ただの技術展示ではなく、“ものづくりの魂”まで伝わってくるように感じました。多くの展示に「人の存在」があるから、心が動く。プラモで情景を作るときの「この人がいるから面白い」という感覚が、ここでは1/1スケールで体感できます。

 モノづくりと人の関係性を、膨大な展示物と一緒に体感できる本館は、間違いなくプラモ製作においても多くの気づきや情熱を僕達に与えてくれます。“人がいるから面白くなる”という展示の力をあらためて教えてくれる、最高のミュージアム体験でした。

フミテシのプロフィール

フミテシ/nippper.com 副編集長

1983年生まれ。模型雑誌編集や営業を経て、様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。プラモと日常を結びつけるアプローチで模型のある生活を提案する。

 

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