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【レビュー】空母のプラモデルと憧れの広告写真/ハセガワ 1:350 ガンビア・ベイ

 自分が編集に携わった本として思い出深い号があるとするなら、月刊モデルグラフィックスの2010年12月号は五本の指に入る一冊だ。ランボルギーニ・カウンタックを取り上げた巻頭特集はもちろん、作例も新製品紹介もコラムも取材記事もめちゃくちゃな濃度でやっていたのだなぁ……と、やや手前味噌な感想が漏れてしまう。そしてこの号を特別なものにしているもうひとつの要素が、ハセガワの表4広告だ。

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 模型専門誌において艦船模型というのはおよそ横に細長い画角で撮影するか、あるいはやや望遠気味でハスに撮り、縦長のページの対角線上に配置するのが常道。しかしこの「1/350 米海軍護衛空母 ガンビア・ベイ」という商品の広告はメインカットが縦長で、わずかに右を向いた空母の飛行甲板がこちらに飛び出すアングルだ。模型写真としては強めにパースが付いているのにも関わらず艦尾までバチッとピントが来ているのは、おそらくシフトレンズでアオリ撮影をしているのだろう。右に添えられた写真も強いパースを付けてやや艦首を下から見上げるように撮られ、これも艦船模型写真の常識から大きく外れている。

 このあまりにも独特なビジュアルと「ガンビア・ベイ」という強烈な語感をふと思い出したのは、ハセガワの再販情報を目にしたからだ。自分と同じように「知ってはいるけど作ったことがない」という友達を呼び寄せ、ふたりでいっしょに巨大なハコを開けると思ったよりも小さな船体と幅の狭い飛行甲板が出てきて思わず「えっ!」と声が出てしまう。同じ1/350スケールだと作ったことがあるのは駆逐艦島風くらいのものだが、飛行甲板の長さだけで言ったらそれより少し大きいな……というレベルのサイズ感である。

 改めてモデルグラフィックスの2010年12月号を開いてみると、その巨大さ、目の飛び出すような価格、本当に作れるのかと心配になるような緻密さでモデラーを驚かせた空母赤城で得られたノウハウを凝縮し、米海軍でも最小構成で建造されたカサブランカ級護衛空母を模型化した……という文脈がしっかりと記されていた。実物のエピソードを語ればきりがないが、そもそもこのプラモデルは「空母という存在を手頃なサイズで、しかし緻密なディテールで楽しめますよ」というハセガワなりのプレゼンテーションであったというわけ。

 それじゃあ、キットの詳細はどうなっているんだ……という話は別の機会に譲るが、未知のモチーフにプラモデルを通して迫る楽しさは格別で、ちゃんと空母らしい迫力を持ったものが予想よりも小さく、しかし合理的なカタチで眼の前にあることがとても不思議だ。縮小模型が見せてくれるほんとうのカタチやサイズに対する驚嘆は、脳内で膨らみきったイメージとのギャップが大きいほど強くなるもの。あのガンビア・ベイの強烈な広告写真は、小柄で鈍重な艦体をこれ以上なく魅力的に見せる「もっとも効果的な魔法」だったのだ。

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からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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