

ギュギュッと詰まったこの姿、船っぽいいい感じの佇まい。武装が多少あるけれど、駆逐艦でもなければ巡洋艦でもない……。しかし立派な帝国海軍の軍艦にして潜水艦隊の旗艦ともなり、9隻の潜水艦隊を世話するのがこの潜水母艦、長鯨なのだ!

潜水艦は水中に潜れる隠密性と喫水線下に一撃を加える強力な魚雷を持つ兵器です。戦艦すら撃沈するその恐るべき攻撃力の高さで、その有効性を第一次大戦以来示してきました。しかし一方で潜水するためにその設計には余裕がなく、積み込める弾薬や燃料、そして食料も多めに持っていくことができません。こうした潜水艦を助けるために泊地に進出するのが潜水母艦の役目です。と、いうことでパッケージの長鯨に潜水艦がくっついているのはそういうことなんです。長い説明になりましたが、潜水艦への弾薬、燃料、食料を補給し、さらに電池や機関の調整修理ができ、そのうえで乗員を休養させる……という役目を持っているのがこの長鯨をはじめとした潜水母艦なのだ! ……ということです。

ピットロードは、とてもシンプルにこの長鯨を作っています。3ランナーで1942年の姿か1944年の姿、どちらか選んで作れます。1944年バージョンはマストにレーダーとなる21号電探を取り付けて、細かい武装、とくに対空用の25mm機銃を増やすことになります。

船体の側面には外板の重なりを表現したモールドもあります。このキットはもとはWシリーズの35番で、ピットロードでも早い時期の製品がベースなのですが、当時からここまで意欲的な製品づくりをしていたというのが驚きです。

組み立ては、シンプルに船体の上にどんどん構造物を積んでいく方式です。だから組み立てはかなりスピーディー。

これは天蓋の支柱で、一本一本こちらが手植えでつけていきます。後部は長さを測るのがめんどうなので適当に植えて測距儀の柱部分に合わせてカット。

こうした細かい作業は手間ではありますが、艦船模型っぽい細かさを体感する部分でもあります。今の最新キットだったら櫛状のパーツを後ろから貼るだけかもですが。伸ばしランナーで自作して、さらに細さにこだわっても面白いです。

艦底部をつけなければ海に浮いたような喫水線モデルとしても作れます。パーツ数はシンプルでも完成時には結構ボリュームがあっていい感じのシルエットですね。こちらは大正13年、つまりちょうど100年前に竣工した艦船で、第二次大戦のころにはやや古い艦船扱いになっているのですが、後継の艦船が空母に改装されていき長鯨も再び第一線へと赴くことになりました。

1945年7月30日、伊根湾で空襲を受け、艦橋に爆弾の直撃を受け損傷したまま終戦を迎えます。その後修理され戦後の復員輸送にかかわり、最後は資源として解体されています。そのころに、御紋章を外し武装もなくいよいよ解体を待つ姿が写真として残っています。ただ21号電探が残っていて、その質感をよく見ることができます。ピットロードはこうした写真を見て、長鯨のモールドを作ったのかな……なかなかいい感じのキットで、作るのも楽しいキットです。みなさまもぜひ長鯨で、潜水母艦という特殊なジャンルの艦船の姿を楽しんでください。