
「最近いろんな種類のプラモデルを組んで、そのフォルムとかディテールだけを観察しているんです。自動車もバイクも飛行機も、その道のプロが作った機能的な面や線があるでしょう。実物を見るのもいいんですけど、プラモデルはそういう『良いカタチ』を自分にインストールするのにとても適しているな、と思って。」
友人がそう語るのになるほどと頷きながら私はハイボールのメガジョッキをオーダーする。幸いにしてツマミは眼の前に大量にある。友人はまだ若く、揚げ物をひたすら机に並べることになんの躊躇もない。

「カタチをインストールするという目的があっても、組んだプラモデルというのはどうしてもプラスチックの質感が剥き出しで、そのまま飾っておくにはちょっと気が引けるんですよ。かと言って捨ててしまうと何度も見返すことができない。それで僕はフラットアルミを塗ることにしたんです。バイクでも、クルマでも、飛行機でも、どんなプラモデルでもとにかくフラットアルミで全部塗るんです。そう決めたものだけ、塗っちゃうんです。」

「透明なパーツのマスキングですか?しません。透明なパーツも全部塗るんです。そうするとこれ以上なにかしようという気が起こらないし、透明な部分も含めた全体のカタチがハッキリ見えるのがいいんです。そもそもフラットアルミってすごく無機質な素材の色ですよね。これが赤とか青とかだとその色を自分が選んだ理由とか心境みたいなものが作為になる。透明パーツをマスキングするのも作為。光沢のシルバーとかゴールドもツヤが出るように塗る……みたいな技巧に意識が行って、それも作為的。だからフラットアルミがいちばんいいんですよ。」

「フラットアルミってどう塗ってもプラスチック感がなくなるし、表面もつや消しの一本調子になるんです。パーツの合わせ目も案外気にならなくなるんですけど、不思議とスジ彫りとかリベットはちゃんと見えるようになる。これ絶対いいですよ。どんどん組んで、フラットアルミで塗った模型がいくつかあると、共通項のある彫刻がズラッと並んでいるように見える。ちゃんと取っておこうっていう気分になります。もちろん説明書のとおりに塗装して『ちゃんと作る』っていうのも忘れたわけじゃないですよ。それとこれとは別です。」

話はここでおしまい。私はそのあとで言われたとおりに自分で組んだ飛行機をフラットアルミに塗り、彼が言っていることの面白さを存分に味わった。なにかのカタチをじっくりと眺めたいとき、ときに色彩は邪魔になることがある。ちょっとした傷やツヤのムラや合わせ目といったプラスチックの肌を金属の鈍い輝きが覆い隠すときの驚きを、あなたもぜひ味わってほしい。シンプル極まりない方法論だが、不思議な効能が確かにある。