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【ブックレビュー】「映画に模型で対峙する」ということ/スケールアヴィエーション『王立宇宙軍 オネアミスの翼』特集号

 模型雑誌の特集と言ったらテーマに沿った作例の数がそろえば成立していると捉えるのが通例なんだけど、ちょっと今回の『王立宇宙軍』特集号はそういう次元じゃない完成度。好きなアニメの特集だからとかそういうことではなく、パラパラとめくっても気分よく、じっくり読んでも面白い「この先繰り返し読み返すことになる」一冊に仕上がっていると思う。

 毎月出ることになる月刊誌における”偶発的にできてしまった傑作号”というわけではない。企画段階から「際立った特集をやるぞ」という気概で作られているのが石塚編集長の所信表明のようなイントロダクションからもそれがわかる。SA誌は誌面全体をシックな雰囲気にまとめてくる雑誌なので、表紙をめくってからこの所信表明のようなイントロまで気分を乱さずシームレスにつないでくれる。
 また、他の雑誌の作例記事フォーマットに慣れていて、今回初めてSA誌を買う人は驚くかもしれないけれど、基本的に各作例にはいわゆる”担当モデラーによる製作文”は存在しない。

 作例記事は完成写真をひとしきり見せた後に置かれる各部アップや製作途中写真とそれに対する短いキャプションで構成される。担当モデラー毎の「自分もこれには思い入れあるんですよ」といったタイプのテキストは全くない。パラパラと流し見したときに見える本文は、実は製作文ではなく「この作例がどういうモチーフのどういう魅力を表現するべく作られたものであるか」という編集部による解説文なのだ。
 おかげで一貫した視座で各作例を読み解いていくことができる。あくまでも『王立宇宙軍』という映画を模型雑誌の特集として、当時映画を見ていない層まで含めた万人に向けてキュレーションするという態度でできているのだ。

 「自分は好きだけど誰でも知ってるヒット作品とは言えないような立ち位置の作品」をどうやって提示するのか?しかも雑誌を丸々費やす規模の特集で……という難題に、今号はみごとに回答してみせている。好きなタイトルでも初見の感動には何を見てもかなわないとか、自分も歳をとったからとか、もう模型誌でこんな満足を得られないだろう……とあきらめていたところに青天の霹靂。模型雑誌ってメディアにまだまだ期待を抱いていいものなんだなと思えて、それが嬉しかった。
 自分が紹介するまでもなく方々で評判であるがゆえ、月刊誌なのに重版までかかったそうだ。だから重版が並んでまだこの雑誌が書店の棚に刺さっているうちにもうひと押ししておきたいと思ったんだ。この映画が好きな人にはぜひ読んで欲しいし、まだ見ていなくてこの本を読んだなら映画を見てほしい。一本の映画とそれを模型を通して対峙し、一冊の紙の本にまとめる在り方というのを考えてみてほしい。これはそういう当てられかたをしてしまう熱量にあふれた号だから。

HIROFUMIXのプロフィール

HIROFUMIX

1983年生まれ。プラモデルの企画開発/設計他周辺諸々を生業にしています。

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