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自動車プラモをもっと好きになる/『オートスポーツ』2025年11月号が面白すぎて心の絶叫が止まらない!

 「いまのスーパーGTの源流にはシルエットマシンがある!『カッコイイ』と『乗りたい』は、人為的に作り出せる”現象”なのだ!」という文法でぶち抜き32ページの巻頭特集を組んだ9月末売りの雑誌『オートスポーツ』2025年11月号がすこぶるおもしろい。Kindle unlimited(初月無料)に加入していれば実質0円で読めるのでこの記事に巡り合ってしまった人は絶対に読んだほうが良い。

 カーカルチャー、とくに改造車の世界というのはとにかく難解だ。難しくて分かりづらいというよりも、教科書的な解説にはなかなか巡り会えないからだ。彼らの意図は合法と違法の間で行為(改造や走行や集会)を通じて表現され、なぜそうするのか、それが何を参照していてどう発展させるのか……といったことはあえて体系化したり、言語化したりする必要に迫られないのだろう、とオレは考えていた。「異文化において、そこにある種の美学があることはわかるが、なにがどうなっていると美的であるのかというのを理解するにはそこに身を投じるしかない」的な難しさと言っていいだろう。

 例えばアオシマのカーモデルにおいて、改造パーツを自分で取り付けるグラチャンシリーズや街道レーサー系のキットと現代的なLBWKのど派手なカスタムカーはどこかで血が繋がっていそうだということはわかるのだが、それがどこに源流を発していてどのように変遷し、海外の金持ちやトップレーサーにも愛好されるようになったのか……というのは皆目検討もつかないというのが本音だった。

 しかし、’70年代末期に勃興し、’82年からわずか2年だけ異様な盛り上がりを見せたシルエットフォーミュラによるレースを源流として見るという視点を与えられると、これまで触ってきたカーモデルや模型店の棚でじっとこちらを見ている未知のアイテムたちが突如として輝き出す。

 言ってみればリアルロボットアニメの隆盛とほとんど時を同じくして、愛車を「フルアーマー化」した作例を持ち寄り、見せびらかしてはさらに先鋭化した表現に挑み……という現象が、サーキットを震源地として全国の若者に爆発的なムーブメントとして広がりを見せたというのは、とてもプラモデル的である。もちろんそこには現代的なコンプラでは考えられないような非合法性や迷惑行為といったネガティブな要素もまとわりつくのだが、それを理由にカルチャーそのもののを「なかったこと」にはできないはずだ。

 特集内では数々のシルエットフォーミュラをデザインした由良拓也やマッチこと近藤真彦、トムス会長の舘信秀といった面々が赤裸々に当時のことを語るインタビューが収録されており、一人で読んでいても思わず声が出てしまうほど痛快だ。とかく「速いこと」が重んじられるレースの世界において、そもそもシルエットフォーミュラというのはズバリどういう規定だったのか? そして悪く言えば”カッコだけ”のマシンがなぜ日本の若者に一大センセーションを巻き起こしたのか。こうした過去を体系的に読める文章は、じつのところインターネット上にはほとんど存在しない。
 昔話だけではなく、そのカルチャーが遺したモノとコト、現代のスーパーGTとの接点、その課題、さらには未来に向けた提言までもがぎゅぎゅっと濃縮された出色の特集。圧倒的おもしろさで「こういうまとめ方と課題設定は、商業誌じゃないとできないよな!」と悔しくなり、またこんな特集に巡り会えたことが本当に嬉しくなる最高の読書体験だった。みなさんも、ぜひ。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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