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万博で触れた、「見えない思いと見えるかたち」——アフリカと中国の展示から。

 素朴な展示の裏にも意味がある……。容易にアフリカには行けないだろうから、万博では行きたいんだよ~ぐらいの気持ちで来たコモンズB。そこで見た多くの木工。妙に再現度の高いレーシングカー。立体の力あふれるEXPO2025大阪・関西万博。

 並べたら勝ち。おそらく「3連休の翌日なら空いてるんじゃない?」と皆が集まった22万人の万博。恐ろしいことに予約不要のどのパビリオンも並ぶことすら打ち切られ、多くの人がどうにもならず暑すぎる会場を右往左往していた。ガンダムの枠開放時間に僅かな希望を託して、なんどもアタックするものの、ご用意できませんでしたの非情の表示。もうダメかもしれない……と思ったときに、予約不要でもどうしても行きたいパビリオンってどこ? って自分に問うて(まあイタリアはさすがに諦めたが)、そのパビリオンへと真っ直ぐ向かう。

 中国パビリオンはかろうじて並ぶことのできたところで、竹簡のデザインが面白いし、我々も漢文を習ったのでさすがにいくつか読める……となったけど、改めてそのちゃんとした意味はわからないことに気づいた。かつては日本でも四書五経を嗜むのが教養とされたものだが、論語や荀子が元ネタになっていたようだ。出口側にある『百聞は一見に如かず』は今回の万博に対する最も大きな感情で、聞きしに勝るとはこのこと、という体験だった。

 中国パビリオンでは実在が確定している中国の最古の王朝としてよく知られている殷の甲骨文を見られることからはじまり、文字というものや中国の成り立ちを知ることができる。そして青銅器時代であった中国が、その青銅器時代から極めて精緻なものを作っているということを思い知らされる。展示は基本的にはレプリカのようだが、そのサイズや表面に何を刻んだか、古代人のやる気が伝わってくる。3000年以上前の人間が作った造作が、現在の我々を感情を貫くものになっているのだから、人間はすごいものである。おそらく今の我々が作った何かが、3000年後の人間の心にも届くのだろう。バラバラのプラスチック部品を集めて、思いを乗せたものを作っている人間からすると、まさにこの青銅器たちの展示から受け取るものは多い。

 濃厚な中国の過去、パンダ、そして未来を受け取った私は、すっかり中国に心を奪われた人間になってしまい、あぁあのプラモデルメーカーもこのメーカーも中国じゃないかとふらふら夕暮れの会場を歩いていた。これまた並ぶことができたチェコのビールとを買い、味わいながら文字通りたそがれていたら、あっという間に夜に。夜になったらいくつかのパビリオンは入りやすくなっていたので、アフリカの国が多く集まるコモンズB館へ。

 それぞれの国には文化があり、その一部がこの会場にある……。そしてそのなかで、実用のものだけでなく工芸としての立体も多くあり、自分たちの生活にまつわるものや動物などが親しく立体になっている(写真はモーリタニアのラクダ、でかくてかわいい)。会場を歩いていると、なぜか裏道のような構造のところにカーボベルデ、チャド、シエラレオネの3国が隠れていた。チャドはアフリカでも真ん中のほうだよね……なんて見ていたら、ちょうど解説をしてくれるアニキがそこに現れた。

 「ここの展示は触っちゃだめなんだけど、私はチャドの国から許可を得ているので触って見せますね。」いきなりパンチの効いた解説からはじまって、そこに展示してある謎のパッケージを開封。それは香木で、香木ってなんというか、ちょっと独特の、ヒノキとかの木の香りをもっと怪しげに曲げて煮詰めたようなアヤシイ濃い匂いがする。同じく嗅いだ人からは洗剤みたいな匂いとも形容されていたけど……。「この香木はね、ここに展示している香炉で炊いて香りを部屋に満たすの。女の人がいるからちょっといいづらいんだけど、これは旦那さんが家に帰ってきたときに、この香りで満たされてたら、今夜はOKのサイン。」あぁ~!

 「チャドはね、北は砂漠で南はサバンナだから、すごい数の部族がいるのよ。だから砂漠ではラクダがたくさんいて、これは人が乗るのにも、そして食べるのにも使える。さらに皮は加工して使うこともできる。だからこの製品はラクダの革。南では木があるから木工があって、それで像を彫っている。なんでこんな展示かといえば、チャドって日本の渡航情報だと渡航するな、ってなってる。だから日本の人が来れないから、ここでなんとか商売をして、うちの製品どうですか買いませんか、っていう側面もあるわけ。」

 アニキの説明を受けたあとに各国の展示を見ると、確かにそういうことか……と思う部分が多くある。文化、日本とのつながり、そして”投資”の言葉……。アニキの説明はさらにアフリカの深淵へと進む。

 「ソマリアの展示見た? あれがなんでサッカーの展示かっていうと、ソマリアはソマリランドとプントランドって大きな勢力があって、いっつも揉めている。ひどい状況で、若いやつは海賊になるしかない。あそこはアフリカの角で、船がよく通るから。でもそんなソマリアで、唯一の希望がサッカーなの。でもチームも全然強くないんだけど、国際試合で点を取るだけでも国全体が大盛りあがり。希望がサッカーにあって。いま若者がすこしでもサッカーがうまくなって、こうやってどこか世界のチームに呼ばれるような選手になれたらって夢がある。そういう展示なの。」

 布を縄でくるんだボール。廃材を使ったボールにはそんな意味があった。同じカラーをもったFC大阪やヨーロッパのコモが手を取り合った、という展示。単に見るだけではわからない、展示の意味を解説される。「自分は20カ国ぐらい解説ができるんだけど、ひとりしかいないから全部の解説ができないんだよ」チャドの展示でソマリア展示の深すぎる意味を知る。


 紀元前の人々が思い描いた宇宙や、権威者のすごさを伝えるもの、あるいは身近なものを親しみを込めて、そして日々の糧を得るためのものとして。万博で出会った豊富な立体のたちは、様々な人間の意志のもとに作られて来た。冒頭の木のレーシングカーは国土の多くが森林の中央アフリカの展示。ダイヤモンドや金の輸出がすごいんです、という立派なパネルと、薄い素材の森林の危機と絶滅危惧種を伝えるポスター。表面的な情報を見るだけでなく、ちょっと深読みしてしまう配置。それにしても、木彫りは良かったなあ。

 GUNDAM NEXT FUTUREは見られなかったけど、過去の偉大な青銅の遺物や、たくさんの立体物、そしてそれを作った人間の意志に触れた。たくさんの人間が交錯する万博という場所で見たものは、未来、夢、そしてままならぬ現実、大きな希望かもしれない。

けんたろうのプロフィール

けんたろう

各模型誌で笑顔を振りまくフォトジェニックライター。どんな模型もするする食べちゃうやんちゃなお兄さんで、工具&マテリアルにも詳しい。コメダ珈琲が大好き。

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