
矢を放った直後の右手の表情と、左手の「弓返り」の造形にシビれてしまいました……というのは後知恵で、麒麟児スペシャルの武者精太頑駄無が組み立てキットになったのならば買わなければダメでしょうということで大興奮のままにゲットしました。「ガンダム スペリオルディファイン」というシリーズの1作目より武者精太頑駄無です。組み立てキット……と書いたのは、このアイテムがプラモデルではなく「食玩」のカテゴリだからです。nippperはあくまでプラモデルのレビューサイトなのでよろしく。今回は特別ね。

本シリーズは同じ食玩の「ガンダムアーティファクト」とほぼ同じ形態で、ABS製の単色パーツを組み立てて作り上げる組み立てキット。アーティファクトがリアル等身のモビルスーツに独特のデザインアレンジを施したないようなのに対し、スペリオルディファイン(略してSD)はモビルスーツをスーパーデフォルメ等身の立体化。両者とも可動モデルではなくポーズ固定の設計とすることでパーツ分割の柔軟性を確保し、各部の造形をシャープかつ細やかに仕上げているのが特徴です。

スライド金型を使うことでモビルスーツの立体物ではほとんど見たことがないような躍動感のある手の表情を実現。パーツの分割も上腕や前腕をそれぞれ組み立てるのではなく、ユニットをまたいで上下左右斜めと変幻自在に分割しているので思いもよらぬ位置に思いもよらぬ組み合わせが登場して組んでいるあいだもエキサイティング。ちなみに説明書はパッケージに入っておらず、箱天面に印刷されたQRコードを読む「WEB取説」が導入されています。スマホやタブレットで閲覧すれば好き放題拡大できるので便利だね〜。

パーツはかなり小さく、切り出しや組み立てには拡大鏡を使うのがオススメ。ABS製という表記がありますが、素材はかなり硬めで切るときにサクッとした感触があります。パーツの随所に刻まれた深い彫刻、くっきりとした段差は単色の造形としても陰影がハッキリするし、塗装したら映えるだろうな……という気持ちをかき立ててくれます。

すんごく驚いたのが頭部のパーツ。兜の飾りを除いてフェイスも一体成形となっていて、まずどうやって金型から抜いているのかぜんぜん想像がつかない。さらに正面から見るとフェイス〜ヘルメットの下面左側が大きくえぐり取られているのがわかります。

頭部パーツを下から見てみると、平面形も左右対称ではなくすこし歪んだ形状になっているのがわかります。モビルスーツという硬質なモチーフを立体化しつつも、左を向いて弓を放った瞬間……という大胆なポーズを取らせ、ユニット同士の干渉を回避しながら全体が自然な造形になるようパーツの形状をこまやかに調整しています。

パーツを変形させたり干渉するところを削ったりするアイディアは、「完全なモビルスーツの形状を作ってから可動ギミックでポーズを付ける」という方法論とは真逆にあり、むしろヨーロッパを震源に親しまれているテーブルトップゲームのミニチュアで見られるフィギュア的な造形手法です。
古くはガンプラの「ガンダム情景模型シリーズ」、最近では「ガンダムアッセンブル」などでも取り入れられてきましたが、こうしてさまざまなモチーフに似合ったポーズと最適な造形を盛り込んでいく手法は組み立てるときの感触にもバラエティが出るので大歓迎。右腕と左腕、右足と左足で同じ工程を踏む……という単調さからも開放してくれて、ワクワクする気持ちが持続します。

少々組み付けに難儀する固いハメ合わせ部分もありますが、最近ではABS用の接着剤も多様化してきました。接着剤を潤滑剤がわりに使いながらハメ合わせれば、パーツがポロポロ取れることもなくなります。パーツ分けはある程度塗装を意識したものになっていますので、ユニットごとに組み上げてから筆で細部を塗装し、最後に組み立てるという楽しみかたももちろんOK。いわゆるフィギュア的/スケールモデル的な文脈で立ち上がる武者精太頑駄無の姿は、なんだか夢を見ているみたいでとても感動的でした。みなさんも、ぜひ!