模型自身/「タミヤ ベーシックツールセット」の魔法。

 模型を楽しんでいる人の数だけそれぞれの思いがある。そしてそれは僕にももちろんある。そんなことを話したい。僕の模型自身。

▲僕が初めて「プラモをプラモだと意識して」作ったのがBB戦士の烈光頑駄無。今”LEGEND BB”となって、また僕の目の前に

 小学校3年生の時、僕は8歳離れた兄からガンプラを買ってもらった。それが僕にとっての初めてのガンプラ「烈光頑駄無」。その時プラモと一緒に「これ、やるよ。」と四角い箱をもらった。そこにはツインスターが描かれ、ニッパー、ピンセット、カッター、棒ヤスリにドライバーと、その当時の僕にとっては「これで作りたいプラモが全部作れる」と思えるものが入っていた。まさに夢の箱だった。

 「タミヤ ベーシック ツールセット」。少年時代の僕の相棒。このセットがあったから、一度模型から離れてもまた戻ってくることができた。ツールセットにはそんな力があるんだ。

▲こんなに美しく工具がセットされている。蓋を開ける時、いつもワクワクドキドキしていた

 模型にのめり込んでいく人は、このセットにある工具からひとつずつ卒業していき、より高性能なものへとステップアップしていくだろう。そして模型から離れる人は、きっとおうちの片隅とか机の引き出しの中にこのセットをひっそりと置くだろう。僕は後者で、小学6年生でガンプラやミニ四駆から卒業した。ビートルズを聴き、オアシスを聴き、マイケル・ジョーダンやロベルト・バッジョに夢中になり、リーバイス501を古着屋で探しまくった。もう頭の中にはプラモデルは楽しみたい趣味じゃなく、「思い出」になっていた……。

 部活も引退した中学3年生の夏休み、高校受験の勉強を仲間と一緒にしている時だった。その時小学生の時に見たガンダムの話をして盛り上がったのだ。話題の中心は『Vガンダム』『Gガンダム』『Wガンダム』とTVで放送されたガンダムから始まり、劇場公開の『F91』やOVAの『機動戦士ガンダム0083』といったもの。俺たちは「0083」を『新SD戦国伝 地上最強編』の白龍頑駄無や青龍頑駄無で知り、むしろ本編を見ていない仲間もいたから、そのままレンタルビデオ屋で「0083」のVHSを借りてみんなで鑑賞したのだ。

 仲間と一緒に見たガンダムは猛烈に面白く、そのままガンプラを買いに行った。そして俺は「MG GP01 ゼフィランサス」を手にした。MG? 強いのか? なんだ? でもこれがどうみたって一番かっこいい。これに決めた。それを手にしている俺に、仲間が一言「それ作れるの? 道具は?」。その言葉が俺の脳内の思い出を蘇らせる。あの四角い箱……ニッパーやカッターが入っている箱が確か……あのツールセットはまだあるはずだ!

▲イラストの力は偉大だ。何がセットされているのか一目瞭然
▲恐る恐る刃を折った少年時代の思い出が蘇る。新しい刃になった時に一気に切れ味が戻る感覚が好きだった

 家の机の引き出しを開けると、ツールセットはそのまんま入っていた。少しだけニッパーは錆びていたけど、全然使えた。工具を買い足す必要はなく、俺はその日から「MG GP01」を作り始めることができた。久しぶりのガンプラ。箱を開けるとブルーバックにカッコよく撮影された写真が印刷されたカバーが顔を出し、それを外すとこれまで見たことがないような綺麗なパーツと、ワクワクする解説が書いてある説明書が出てくる。早速ニッパーを握りゲートをカット。あの頃の感覚が指先を翔ける。カッターナイフでゲート跡を処理するときの緊張感。そして形になっていくガンダム。コアファイターIIが変形してコアブロックになった時の感動は忘れられない。

▲ツールセットの意義。それはいつだって帰ってきていいんだよという優しさなのかも

 模型を始めた時にもらったツールたちが、また僕を模型趣味にノンストップで引き戻してくれた。ツールセットがあったからこそ、すんなりと戻ることができた。そんなタミヤの「ベーシックツールセット」を少年時代に手にできたのは幸せだったのだと改めて思う。これに接着剤やピンバイスといった何かを足すだけで、模型の世界で迷子になることはなくなるのだから。

 「工具無しで組むことができる模型が今はあるじゃないか」とか、そんな話は僕の中ではどうでも良い。世界のほとんどのプラモは工具が必要なのだから。工具があればいつだって様々な模型を始められるし、一旦離れても戻ってくることができる。それがツールが持つ魔法の力なんだ。

■タミヤ ベーシックツールセット

 模型作りや工作に欠かせない基本的な工具を集めたセット。ニッパー、平ヤスリ、ピンセット、カッターナイフ、そしてプラスドライバー、マイナスドライバーの6点をケースにセット。それぞれの工具がきちんと収まるように設計されている。プラ製のドライバーは2mm前後のビスなど小型のネジ類に適応。

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フミテシ

1983年生まれ。月刊ホビージャパンで12年間雑誌編集&広告営業として勤務。ホビージャパンで様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。「ホビージャパンnext」、「ホビージャパンエクストラ」、「ミリタリーモデリングマニュアル」、「製作の教科書シリーズ」などを企画・編集。