
旅客機の模型って「胴体と翼がくっついて、あとはJALとかANAのデカール貼ったら終わりでしょ」的なシンプルさがあります。マニアじゃない限り機種の区別なんてそうそうつかないし、B737の300型と800型の違いなんてもっとわからんと思うんです。しかし、世の中の機械のカタチと色にはすべて理由がある。そこに書かれた文字や記号にも全部意味がある。旅客機という「だいたいどれも同じに見えるメカ」にこそ、小さな差異に目を向けて愛を語ろうじゃねえか……という気概に溢れた革命的プラモデルがハセガワから発売されました。スカイマークの運行するボーイング737-800型機です。

ハセガワのB737-800は2008年に発売されたモデルで、従来品のJALやANAの機体に続き本作はスカイマークのマーキングを再現したいわゆる「デカール替え商品」にあたります。しかしそのデカールがスゴい。マジですごい。まず大判。そんでなんか細かいデカールがめっちゃたくさん印刷されている。旅客機でここまで個体ごとの特徴を再現してやろうという執念めいたものを感じられることが嬉しい。ありがとう。

何よりやヤバいのが窓ですよ窓。濃いグレーの窓がズラーッと並んでいるのが旅客機模型の記号的な表現だとすれば、本作では上半分にほんの少し明るいグラデーションをかけて奥行きを表現したものと、それとは別にシェード(ブラインドね)が閉じたもの、半開きのものも用意されています。縁のところに少し影のラインを入れることで立体感が出ているのにも感涙。
離発着時にはすべてのシェードを開いておくことがルールになっているから空港近辺ではまず「シェード全開」の旅客機しか撮影できないんだけどさ、この模型ではデカールを適宜自分で差し替えることによって「巡航時の姿」が再現できるんだよなぁ。つまり「ベルトサインが消えたあと、乗客たちが思い思いの旅をしている様子」がこの窓のデカールだけで感じ取れるわけよ。すごいことですよこれは。

主翼の端が上に跳ね上がった部分(ブレンデッドウイングレット)には機体ごとにマークが描かれているのですが、これまで使われてきた13種のマークをすべて収録。あなたの乗ったことのある機体はどれだったか、もし写真を撮っていたら(あるいはこれからスカイマークを利用することがあったら)ぜひとも確認しましょう。
また、レジ(JA73◯◯と記載される機体記号)は13種類が収録されておりますが、なぜ29個すべてを収録しなかったのかをざっくり推測すると、「特別塗装機として運行された履歴のある機体を注意深く避けているのではないかな……(これからの製品化の可能性をわずかにでも残しておきたいよね)」という雰囲気が嗅ぎ取れます。おもしろいなぁ。

キット自体はパーツも少ないし、白とグレーの2色のプラスチックでなんとなくそれっぽくはなりますが、胴体下面の塗装とかエンジンの塗装を少し頑張ればデカールのリアリティに寄り添った完成品を手に入れられます。まあこのへんは皆さんのスキルに応じて「どう仕上げるか」を選んでください。どこまで頑張ったかで誰かになんか言われる筋合いはないので、まずはカタチとデカールを楽しもう。

スカイマークはいろいろあって経営がピンチになったあと運用する機体をすべてB737-800に統一して経営の合理化を図りました。まさにこの飛行機に社運を賭けたと言っていいスカイマークが「自社の飛行機をもっともっと愛してほしい!」とハセガワに協力しまくったことが窺える最新プラモデル。じつはデカールについてもっともっとマニアックな話をしたいのですが、これは次回のお楽しみっちゅうことでひとつ。それじゃまた。