

2012年に発売されたHGUCハンブラビは、シリーズ145番目のキットとして登場した。発売当時に中学生だったユーザーは、いまや30歳前後。時の流れとともに、このキットがまとう「2010年代初頭のガンプラの空気」を再び味わいたくなる気持ちが湧いてくるのも自然なことかもしれない。じつは今回初めてこのキットを組んだのだが、現在では250以上がラインナップされるHGUCシリーズのなかでもとりわけ異質な存在感を覚えたのはどうしてだろうか。

設計面の話をすると、本キットには汎用ポリキャップであるPC-001が採用されている。これは当時のHGシリーズを長らく支えてきたマルチプレイヤー的な存在で、ハンブラビではこのPC-001に加え、12〜15番の補助パーツを彫り足した「強化型」をほぼ無駄なく使うことで変形MSの多彩な可動ギミックを担保している。ここにはポリキャップに可動を頼っていた時代の蓄積と工夫が見られる一方で、工程を増やすうえに塗装や接着も難しく、さらにそれ自体が容積を必要とするために設計の自由度に限界を設けていたポリキャップという素材そのものが主役から降りていく「黄昏」の兆しも感じ取れる。もちろんこれは、「ガンプラをガチる人」の視点なのだけど……。

組み立てを進めていくと、キットとしての古さも隠しきれない。パーツカラーは全9色と多めながら、おなじみの多色成形ランナーは用いられておらず、細部の色はシールで補う設計。ディテールやユニット構成といった演出とは無関係な合わせ目もあちこちに残されており、スネ前面など無加工で組むと目立ってしまう部分も多い。いまのガンプラに慣れた目で見ると、全体に超効率化される前の設計思想が色濃く残り、「古色蒼然」という言葉がふと浮かぶ。ひとことでいえば、気軽に組むにはやや骨が折れるタイプのキットと言っていいだろう。

だが、それこそがこのキットを組み、面白がる理由でもある。たとえば当時の雑誌作例の世界では、ガンプラ特有のディテールアップやプロポーション改修と並び、合わせ目処理や塗装の順序の工夫、後ハメ加工の提案、軟質パーツの処理方法などが「プロの技術」として惜しみなく紹介されていた。
当時編集者であった自分にとっても、そうした作例を目の当たりにして「プロってすごいなぁ」と感じるのは、つまりいまのガンプラを”うまく”作ることとは少し違うポイントだったのだと気づく。ガンプラって作例とともに育ち、いつしか誰もが作例のようなものを手に入れられるようになったんだなぁ……(=2010年代のガンプラもまた、着実に「旧キット」的な立ち位置になっていくんだなぁ)という感慨が、むしろこのハンブラビによって浮き彫りになるのだ。

HGUCハンブラビには、あの頃にはまだ残っていた(いわゆる旧キットとはまた違った意味での)「めんどくささ」が確かに詰まっている。合わせめや色分けや可動ギミックに至るまで、とにかく効率化が推し進められたガンプラがどんどん発売される今日、13年前のキットを改めて組むにはそれなりの覚悟がいるが、だからこそ真正面から取り組むときに考えることは多いはずだ。
シールを貼るか塗装するか、合わせ目をどう処理するか、どこまで自分の手で仕上げるか——そうした問いに向き合いながら組むこと自体が、当時の自分への再会でもある。この時代のキットが再販のたびに熱望されるのは、そんな記憶と手応えを今でも求めている人が、少なからずいるからだろう。