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【レビュー】「ロボット」であることで見え方が変わるピーキーさ/WAVE VF-1S/A 1:100 スーパーバルキリー バトロイド

 ファイター形態を作ったならその対となるバトロイドに手が伸びるのはごく当然のこと…というわけで立て続けに組んでしまったウェーブ製バトロイドバルキリー。ファイターからひと月遅れて2010年4月にリリースされたバトロイドをベースにスーパーパックが足されたのが本キット。連続リリースを前提に同時期に開発されただけあってプラモデルの”仕様”としては同じなのだけれど、想像以上に組んだ上での感想が違うモノになってしまった。

 ファイター形態を先に組んだ時のレビューが「やや人を選ぶかも」だったのだけども、両方組んだ今となっては「凄く面白いかったのでファイターもバトロイドも両方組んで欲しい!」というのが今の率直な感想というか……”願い”だなこれは。もう発売から16年もたつキットだけれど、気になっているヒトには是非両方組んで欲しいと強く思う。

 ランナー状態で見ただけでも意外な箇所にスライド金型が駆使されていて面白い。胴体胸の吸気方向に深く潜り込む形状の開口にするインテーク。急角度で立ち上がる側面の彫刻をシャープに造形したバックパック。どちらも分割して組むにはサイズ的にも手間的にも大変になる箇所なのでウレシイ。

 そしてS型の頭部。ファイター形態とは全く別のバトロイド専用設計。ファイター用では左右分割だったのが顔正面に対して上下方向のスライド金型によって組みあがった際に顔の正面に合わせ目がなく、なおかつ造形もディティールも、組み立て時の扱いやすさにも優れた部品に仕上がっている。

 このフェイス側の扱い易さとバーターで冒険したのではないかと思う透明なバイザー部品。写真右端がS型用なのだけれど、御覧の通り差し込みピンや穴がなく、ほぼ組みあがり時に見える輪郭そのままの形状。 ここは浅い勘合(それでも位置はしっかりと決まる)を内部のポリ部品で後ろ端を抑えるように挟み込んでの組みつけで、なかなかに神経を使う。それでも透明度が高く差し込みピンを使わずに閉じる頭部の組みあがりは、その労力に見合った景色をみせてくれる。A型の頭部もバトロイド用の設計で首が動くようになったモノが付属する。
 



 そしてモナカ割の前腕部の垂直面のディティールの再現もスライド金型で対応。執拗ともいえる各面への彫刻がこのキットの白眉といえる。


 ディティールは完成後にはほとんど見えなくなる面にまで及び、組み立て作業を大いに盛り上げてくれる。胴体部はその真骨頂であらゆる方向の面にディティールが彫りこまれた部品を組み上げていく。人型のロボット故に慣れ親しんだ近似サイズのガンプラと比べてしまうのだけれど、それにしたって部品の印象が全然違う。
その正体の一つなんじゃないかと思うのがその肉厚。多くのキャラクターキットが1mm厚以上を標準肉厚としてくる中、このキットは1ミリを切る肉厚を多用している。翼やアンテナはもちろん、箱状に組み上げる部品やその勘合ピンや受けに至るまで、特に組み立て時に内側にポリキャップを挟み込む際にはその薄い肉厚と高密度なディティールからくる精密感に「キットとしてのピーキーさ」をビンビンに感じ取れると思う。

 肉厚1ミリを切る部品として特筆なのが、ガンポッドのストラップ。軟質なポリ素材のランナーに配されたこの部品の帯部分の肉厚はたったの0.6ミリほど。



 そして対照的に手指の部品は大胆に肉厚を盛った作り。ランナー状態でもわかる通り、ガンポッドを持つ手指はグリップと一体成型で不用意な隙間ができずしっかりと「握り込んだ」表情が素晴らしい。

 握りこぶしも平手の組みあがりも出色の出来栄え。16年も前にリリースされたキットだというのが俄に信じられないくらいイイ。手指自体の造形の良さもさることながらボールジョイントの生やし方にも注目して欲しい。


 取り付けると前腕の袖口へと連なりが自然でイイ。手首でまっすぐ切られた平面から生えた丸棒の先にボールがつくような造形だとこうはならない。先端の3砲身ガトリング砲口のキワの鋭さに、グリップを握り込んだ手指の造形、極薄ストラップの柔軟な表情に袖口からの自然な連なりの佇まい。最近発売された新F・ハンドもそうだし、一連のボトムズキットもそうなのだけれどウェーブは「アニメロボットプラモデルの手首の造形」に一番向かいあい続けてきたメーカーなのかもしれない。

 造形面ばかり称えてしまったけれど非変形キットであることを生かした関節構造も見どころ。胸の前後スイングや腰の左右スイング機構等、のちの他社製VF-1バトロイドのキットでも採用される可動機構を最初に実装した存在でもある。

 組みあがると1/100のサイズ感も相まって360°舐めるようにグルグルと眺めるのに具合がいい。人型の部分の身長でいえばアニメロボ好きなら一度は作ったことがあると思う1/144のRX-78ガンダムより一回り小さいくらい。なのにずっと大きいロボットをモチーフにした縮尺模型に見える。

 キットのディティールはプラモデル用として新規に起こされたのではなく、アニメ制作時からの設定として存在するモノ。「リニューアルに際してのアレンジ」ではないところがミソだな。マクロスがアニメ設定の段階で、ガンダムのみせてくれた「リアリティ表現」を推し進めた表現を目指して作られたというのがよくわかる。



 足の裏もロケットノズルの中も、こんなに隙なくデザインが起こされていたんだなと。どこを見ても「河森氏の描いた設定画で見たことがある!」姿で「あの設定画の立体物を手にできている」という満足感がある。

「精密だけど組みにくい」という感想を抱いたファイター形態に対して、このバトロイド形態では「組みにくいけど精密で繊細で満足」なんて好意的な受け止め方をしている自分に驚いている。どちらも同じように組みやすいとは言い難いピーキーな組み味であるのに。スナップフィットになったのなら簡単に組めるようになっていて欲しいと思ったファイターと、組みにくくたってそれに見合った精密感が得られれば満足できると思えたバトロイド。VF-1バルキリーという同じキャラクターなのに形態によってこんなに違ったバイアスがかかった心境でキットと向かい合っている。


 ウェーブの1/100VF-1バルキリー。バトロイドもファイターも両方組んでみてほしい。どんな期待を抱いて自分がモチーフに接しているのか?そんなことを考え込んでしまう、モデラーを写す鏡のようなキットなのだ。

HIROFUMIXのプロフィール

HIROFUMIX

1983年生まれ。プラモデルの企画開発/設計他周辺諸々を生業にしています。

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