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スケールモデルのように振る舞い続けた20年/VF-0S ガウォークwithゴースト

 ハセガワのマクロスシリーズで初めてアニメ展開中にキット化を発表し発売されたのが『マクロスゼロ』に登場するVF-0フェニックス。無人戦闘機ゴーストを装備した最終決戦仕様のファイター形態まではリリースされていたのだけれど、今回は10年以上のブランクをおいてガウォーク形態がついに登場!というアイテム。

 従来製品に新規部品を追加したバリエーションキットなのだけれど、大元になったハセガワ製「VF-0 ファイター」は2004年発売──つまり20年ほども前の存在なのだ。その内容はというと、自他共に認める「飛行機のハセガワ」だった時代のマクロスファイターとして脂の乗った仕上がり。「VF-1より前に作られた現用戦闘機に近しい存在」という飛行機モデルのテイストを存分にあてがっていける基本設定を始め、大柄な機体サイズに3DCGの導入でより緻密に設定されるようになったディティールの再現。VF-0というメカ自体がこのサイズの飛行機プラモのモチーフとしてじつに具合のいい存在でもあったとも言える。 

 自分もプラモデルの設計を仕事にしているけれど、スケールモデルとキャラクターモデルは往々にしてエッジのシャープさに対して課される「薄さ」や「尖り方」に対する設計基準がかなり違う。安全基準や想定ユーザーや生産設備のほか、自分の部署には伝わってこないような色々な事情によって、ほとんどの場合キャラクターモデルはスケールモデルよりも分厚く丈夫な基準で開発されている。ハセガワのキャラクターモデル全般の特徴として、この「設計基準」を同社のスケールモデルと同じに設定していることに由来するであろうシャープさと繊細さがある。

 
「実物の姿を写し取るため、プラスチックの成形品としてはかなり攻めた数値に設定されたスケールモデルならではの設計基準」をそのまま架空のメカニックに適用して作られるが故に発生する”リアリティ”……。
 これはVF-0に限らず、成形品としてのハセガワのキャラクターモデルがスケールモデルで見られるようなシャープさや繊細さを備えて仕上がり、それに起因するリアリティをもれなく、半ば自動的に獲得できてしまうということでもある(!)。

 このキットにはファイター形態とバトロイド形態の2つの商品からパーツが流用されている。余剰パーツとして同梱された「ファイター用の脚部」と、ガウォークで使う「バトロイド用の脚部」のパーツを比べてみると、お互いが異なる設計基準で作られているのが一目瞭然。薄く径の小さい細かな穴で位置決めされるファイター用の脚部に対し、厚肉で太さ深さもじゅうぶんにあり、強度が確保されたバトロイド用の脚部……と、ひとつのキットの中で異なる味わいの部品を比較できる。


 そして上に挙げたような「異なる設計基準」がひとつのランナーに同居しているのが、今回新規に起こされたガウォーク用のフトモモ周りに相当する部分だ。ほとんどスナップフィットと言っていいくらいの太さのピンが並ぶポリキャップ周りに対して、吸気ファンをチラリと見せるインテーク周りはスケールモデル準拠の薄さを保ち、四角いインテーク入口から丸いファンに連なる曲面で繋いだカップ状のパーツを噛み合わせて組み上がり時の強度を確保している。

 可動部である手足の大半は2006年発売のバトロイド形態からの流用。このあたりは当時のガンプラの作法を取り込もうとしている構成で、特に可動する指や、ガンポッドを保持するための差し込みタブが掌に配された掌はガンプラ味が強い。そんなガンプラライクな箇所と、往年のエアモデルライクな箇所がひとつのキットに同居する。これはつまり、ガウォーク(航空機と人型ロボットの中間形態)の概念的な魅力がそのままプラモデルになったと言えるんじゃないだろうか?

 そして、このガウォークの両足にファストパック、積載限界のミサイル類、極めつけには背面に無人戦闘機ゴーストを装備すれば盛りに盛った劇中の最終決戦仕様になる。キットとしても最初のファイターからここに至るまで20年間部品が盛られ続けてきた集大成。同じ「リアルロボット」の仲間であっても、もしこれがガンプラだったら10年を迎える前にもとのキット自体が丸ごとリニューアルされているだろう。そういう意味では2004年の最初のファイター発売以来、ハセガワのVF-0は変わっていない。20年前から変わらないまま部品が追加され、新製品として仕立てられた。おそらくそれ自体もハセガワというメーカーにとって「いつもやっていること」でしかないのだけれど、その態度がまた「自動的に」同社のマクロスシリーズを「スケールモデルっぽい振る舞いで作られたキャラクタープラモデル」たらしめていると思う。
 「ようやく3形態揃うのかぁ……」といった程度の目線で捉えていたのだけれど、いざ組み立ててみれば、何気にこのアイテムはハセガワのマクロスプラモ20年分の歴史が物理的に同梱された集大成になっているということに気付かされた。ヤックデカルチャー!

HIROFUMIXのプロフィール

HIROFUMIX

1983年生まれ。プラモデルの企画開発/設計他周辺諸々を生業にしています。

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