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プラモデルが運んでくれる最高の造形、最高のエピソード/私がエアフィックスのシャノン級救命艇を激推しする理由。

(Photo by RNLI)

 英国エアフィックス社の最新作、王立救命艇協会(=RLNI)のシャノン級救命艇がものすごく良い。なによりまず王立救命艇協会というのを私は知らなかったのだけど、このプラモデルで知った。シャノン級という救命艇も知らなかったけど、いまではプラモデルのおかげでその色とカタチを心からカッコいいと思える。

 これは知ってるものを確認するプラモデルではなくて、はるかイギリスに高い志を持ったボランティア団体としての王立救命艇協会があり、そこにめちゃくちゃカッコいい最新鋭の救命艇が配備されているということを知り、尊敬しちゃうプラモデルなのだ。
 しかし、ひとつだけ大きな欠点がある。日本では昨年このプラモデルが発表されたときに予約した人以外、いまのところ手に入いれるのがだいぶ難しそう、という点だ。


 現在エアフィックスのカタログに記載されているのはスターターセットのみで、キットに加えて接着剤と塗料と筆が同梱されたもの。さらに同型のすべての個体を再現可能なデカールセットも別途売られている(これは同社の製品の中でもだいぶ珍しいことで、RNLIとエアフィックスが密な関係にあることを感じさせる)。筆は大小2本、説明書で指示される色をしっかりとカバーしたハンブロールアクリルという水性塗料が6色10本用意されていて、あとはニッパーとカッターがあれば完成させられるはず、という内容だ。

 日本では当然ながら一生目にすることがないだろう救命艇という変わったモチーフに興味を持ったから買ったというのも半分あるが、3DCGで作られた完成見本画像からただならぬシャープさが伝わってきたのもその理由。ハコからゴロンと出てくるキャビンのパーツはスライド金型を使って大きくワンパーツになっていて、鉄道や飛行機のような速度感のあるシルエットに無骨な彫刻がビシッと並んでいるのに惚れ惚れする。

 左右合わせの船体はとくに珍しくもないが、6人のクルーが座る座席がデッキからニョキニョキと生えていて、先程のキャビンを被せる構造がおもしろい。1/72スケールなので人間は2.5cm程度の身長となり、同スケールのロボットプラモや飛行機プラモと比べられるのも良い。各所の水密扉や露天の操舵室なども手触りが感じられるディテールに彩られていて、機械としての機能がギリギリ想像できる大きさだ。

 大振りなパーツで構成される船体はとってもクレバーな組立工程になるよう設計されていて、そこに繊細な手すりやアンテナを組み付けることで船らしさがしっかりと表現される。艦船模型と言えば巨大な軍艦……それも1/700や1/350といったスケールが主流だが、こうしたスケールではどうしても省略されてしまう手すりの類が1/72ではしっかりと役者になれるというのもステキなことだと思う。

 塗装の工程を考えながらある程度カタチを作ると、そこには流麗な救命艇の姿がある。ここに荒れた海でもぱっと視認できるオレンジが入り、選定に落ち着いたブルーが湛えられたらば、間違いなくステキな模型ができあがるだろう。「こんなメカは知らないから」と無視するのはもったいない。良い模型がカッコいい実物を自分の家に運んできてくれるという嬉しい体験がここにある。

 このキット、発売後に店頭で見かけることもないし、オンラインショップの在庫もついぞ見かけることはなかった。その気になればエアフィックス製品も個人輸入なのだが、接着剤や塗料が入ったキットは通関の都合上国外出荷がNGになっている(そしてどうやら英国でも大人気でメーカー在庫も常時品薄だとアナウンスされている!)。このキットに興味を持ったみなさんが模型店や輸入代理店にその声を届けて、ふとした瞬間に手に取れるようなアクションにつながってくれれば幸いだ。こんなにカッコいいプラモデルがイギリスでしか買えないなんて、ほんとうにもったいないことなんじゃないかと私は思う。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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