

海の上にいた。
私は観光目的で大洗発のフェリー、さんふらわあ「ふらの」の夕方便に乗り、苫小牧港へ向かっていた。
「ガールズ&パンツァー 劇場版」にも登場したさんふらわあに、夫がどうしても乗りたがっていた。私は船酔いが嫌で渋っていたが、乗ってみると揺れは思ったほどではなく、ネットが殆ど繋がらない点を除けば特に困ることはなかった。ただ、常にブルブルと微妙に揺れているため、夜はほとんど眠れず辛かった。

次の朝、甲板に出てみたら息を呑むような見事な景色が広がっていた。
空と海だけの景色。曇り空だったが、立体感のある雲が広がって、むしろ素敵に思えた。甲板に人影はなく、船は悠々と静かな海の上を進み、白い波を引いていく。とても贅沢な瞬間だった。
そして手すりや救命ボートを眺めている時、まるで巨大なプラモデルの中に乗り込んでいるようなくらくらとした不思議な感覚に襲われた。

なぜそう見えたのか。
ひとつには曇りの影響で影が薄く、全体が平面的に見えたから。そしてそれ以上に、手すりや救命ボートの「スケール感」が強く影響していた。例えば、1/700スケールの船のプラモデルは人間のフィギュアを付属させるにはあまりに小さい。だが、プラモデルを眺める時には手すりや救命ボートから「人のためのサイズ感」が浮かび上がってくる。手すりは人が船から落ちないように設置されたもので、救命ボートは数人が乗れる大きさに設計されている。この「人間のスケールを意識させる」要素が、(本物は1/1であるにもかかわらず!)まるで模型を眺めるときのような印象を強くしていたのだ。

人物が表現されていないプラモデルにも、こうした「人のためのサイズ感」が幻影のように浮き出てくる。スケールを感じさせる定規として、人の存在がどれほど重要かを改めて実感した。当たり前なのに、ちょっと面白い発見に心が躍ったのだった。