

「志摩リンのスクーター」と来れば、それはYAMAHA ビーノだ。綾乃のApeがアオシマ旧製品のリパッケージだったのに対して、ビーノは完全新規金型の新製品としてみんなに記憶される製品になる。これって、ハセガワが1/48スケールのF-22を新規開発したときに実在する米軍仕様よりもACE COMBATに登場した天海春香の「アイマス機」を先に発売したのと同じ現象が起きていて胸が熱くなる。
プラスチックパーツの時点である程度色分けが済んでいて、接着剤を使わなくても組めるスナップフィット仕様になっているのは同社のTHE スナップキット シリーズで培われたツボをバイクモデルでも同じく押さえてみようというトライのように見受けられる。ランナー(パーツのくっついた枠)の配置は劇中仕様の色を見据えつつ、市販車モデルも再現できるよう考えられていて相応にバラバラになっているが、パーツ数はそこまで多くないので探すのに手間取ることはない。

組み始めて少々戸惑ったのは、かなり力をかけないとパーツがハマらないところや、キットそのままでは組み立てが困難なほどハメ合わせが固いところが散見される点だ。前者は接着剤を少量塗ることでプラスチックを少し溶かし、ニュルッとハメ合わせることでどうにかなるのだが、後者はパーツ自体のピンやダボを削るなどの対応が必要で、これが初めてのプラモデル製作になるという人にとっては若干ハードルが高いように思われる。

とくにメッキパーツの大部分で嵌合がかなりキツく、それなりにプラモデルを組み慣れている自分でも破損を免れないところがあった。メーカーとしてはメッキの厚みやハメ込む場所の穴の大きさを調整するという方法もあるかもしれないが、私が「接着剤を完全に排除することがプラモデルを必ずしも簡単にする唯一最良の方法ではない」と考えているとおり、部分的には接着剤を使用する設計としても良いのではないかと思う(実際に同シリーズのApeは接着仕様のキットだ)。

志摩リン仕様にするための専用パーツはかなりボリュームが大きく、キャリア上と左右にくくりつけられたキャンプギアのパーツ構成は組んでいて楽しくなる。スクーター自体も1/12スケールのキットはそう多くないので、通常のバイクモデルとは全く異なる組み味でカタチが出来上がっていくのは素直に面白い。

本キットもまた、綾乃のApe同様「志摩リン本人」はハコの底に入れられたペーパーフィギュア……つまり印刷された2次元の絵によって再現されている。幸いなことに、1/12に近似したところで言えば塗装済み完成品フィギュアシリーズのfigmaにて志摩リンは立体化されているし、同梱されたヘルメットは「不在の在」を示すアイコンとしても、フィギュアに持たせる小道具としても機能してくれる。

現代的なスクーターのプラモデルとしても貴重な本作。タイヤまで硬質なプラスチックなのには驚かされたが、トレッドパターンの再現もうまいこと考えられた分割なのでポジティブに受け止められる。もしもこのアイテムでバイクのプラモデルにトライしてみようという読者がいたら、ハメ合わせをデザインナイフなどでパーツごとに調整しながら、要所要所で接着剤を使うことを躊躇しないことをオススメする。ピカイチの完成度に向かって進むなら、急がば回れ……が本作を組むコツだろう。