

『ミイラの墓場』という映画のことを調べると、散々な言われようです。低予算、設定ガバガバ、輝かしいユニヴァーサル時代の黄昏……。しかしロン・チェイニー・ジュニア演じるミイラの造形と振る舞いは見るものに強い印象を与え、以降数多のモンスターをはじめ多数の映画作品で活躍することになります。
ミイラと言えば包帯でぐるぐる巻きになっているのが相場ですが、そんなテクスチャを硬いプラスチックで表現するのは大変なこと。それを巧みに実現したのがエクスプラスの新作プラモデルです。

例えば脚。前と後ろ左右の3分割になっていて、各所に不思議な凹みや隙間が設けられています。こんなにファジーに見えるパーツがちゃんと組めるのか〜?と不安になりますが大丈夫。デジタル造形と金型加工技術の時代ですから、驚くほどピタリと合わさります。これはエクスプラスのどのプラモデルにも共通する美点です。

ロン・チェイニー・ジュニアにラバーマスクを被せて撮影されたという『ミイラの墓場』ですが、プラモデル化にあたって精悍なシェイプにアレンジされているように見えます。シワシワの皮膚はこうしてサイド光で撮影すると陰影がはっきりと出て非常にリッチな気持ちになるぞ。

プラモデルというのはだいたいモノを前後左右に分割し、金型の「抜け方向」に従ってパーツが造形されます。しかし包帯でぐるぐる巻のミイラを正直に前後左右に分割すると、どうしても彫刻がヌルくなってしまう面が生じてしまいます。そこで、エクスプラスは「包帯ぐるぐる巻きの彫刻がもっともいい感じに表現できる角度」を探りながらパーツの分割方向を決定しています。腰から股間にかけての部分(あえて言うならパンツにあたるところ)の内部を見ると、組み合わさったパーツがひとつとして水平垂直な位置関係にないことが見て取れます。

頭部、胴体、四肢は大きなパーツでガツンガツンと形になりますが、全身からぴろぴろと垂れ下がっている包帯はすべて別パーツになっていて、説明書をよく見ながらこれを接着していくことになります。ロボットや兵器のプラモデルとは違い、パーツの位置や角度が直感的にわからないのがパズル的ですが、「ここだ!」と位置を発見した瞬間にカチリと包帯の接着位置が決まるのがすごく楽しい。

ただひたすらにこまかくバラバラになったものを探り探り組み上げるのはあまり楽しいものではありませんが、ファジーに見えてすべてが調和するように設計されたパーツが魔法のように組み合わさるという点で、私はこのプラモデルが今年の新製品のなかでもトップ3に入る面白いくみ味を持っているなと感じました。パーツも落ち着いたアイボリーのプラスチックですから、そのままでもミイラらしさは充分。そこにスミ入れや炎を意識した塗装を施せばなお素晴らしい仕上がりになるでしょう。組むだけで楽しいミイラ男を、みなさんも、ぜひ。