

ガンプラ45周年を記念する話題のガンプラを自分も買った。
「45年前に発売された最初の1/144ガンダム(=いわゆる「300円ガンダム」)の姿形をそのままに、45年間進化しつづけた最新技術でリニューアル!」というコンセプトを最初に聞いたときは、正直否定的な感想を抱いた。自分にとって”ガンプラの進化”というのは「モビルスーツが本当にあったらこんなディティールじゃないか?」「アニメ作画では伸びたり縮んだりしていた関節の曲げ方も、実在したらスカートが割れたり二重関節で達成されたりするんじゃないか?」といった、結果的にもとの設定のカタチすらアレンジしてしまうようなアプローチそのもの……まさにガンプラから広がっていったロボットプラモ的な”リアル”(=実在性)の探求を指していたからだ。
だから最初の1/144ガンダム(以下:旧キット)と同じ姿に組み上がるというのは、つまるところスタイリングは全く”進化”していないということになる。ニッパーを使わなくてもパーツが切り取れる「タッチゲート」、ひとつのパーツの枠に複数の色のプラスチックが成形されている「いろプラ」、接着剤がなくても組み立てられる「スナップフィット」、通常のプラスチックと近い感覚で加工できるKPS素材を使ったスムーズな可動ギミックといった、最近のガンプラの仕様だけをもって「45年で培った技術と進化の証が確かに入っています」とするのがどうにも許せなかった。
だから自分のような人間に向けた商品ではないなと思いつつも、ならどんな客層に対してどうアプローチするのかという興味で買ってしまった。明らかに自分のような層に向けて開発された商品ですら「アレンジがちょっと好みからズレた」という程度の理由で買わないことさえ珍しくないというのに……。

実際に組んでみると、まったく想像していなかった面白さが立ち上がってくる。最新のキットなのだから当然なのだけれど、パーツに隙間ができたり段差になってしまうようなこともなく、ピシッと合わせ目が閉じる。旧キットでは貼り合わせで生じる段差にヤスリをかけすぎてしまい、人によって異なる形状に仕上がる曖昧なモノになっているんじゃないか……と心配になる所が結構あった。特にこのスネなんかは「このくらい曲面でよかったのか!」と思えるように、誰が組んでも間違いなく設計者が意図した本来のカタチにできるようになったのがウレシイ。まるで旧キットの答え合わせをしているかのようだ。この辺は姿形が旧キットと同じだからこその面白さだと言える。

そして「旧キットのままの姿」と謳いながらも大きく変化したのが色彩だ。今回のキットが「いろプラ」を採用したので単色で成形されていた旧キットと違うのだ……ということではない。今回のキットは旧キットの説明書で指定されている水性ホビーカラーの各色とも違う色で成形されているのだ。黄色は赤みが強く、赤はほんのり明るく、青はもっとずっと明るめに……。
旧キットのカラー指定に沿ってると言えるのは首と握りコブシのニュートラルグレーくらいなもの。旧キットではミディアムブルーで指定されていたランドセルとビームライフルは、45年の間にリファインされ続ける中で収斂していった「首やコブシと同じグレーにまとめる処理」が採用されている。旧キットと同じようでいてパっと見では気づかないところでチューニングされているのだ。「昔のままの姿」に色味はカウントされていない。

いちばん驚いたのは白の成形色。写真上の左がREVIVAL版、右が旧キットのランナーだが、旧キットの成形色は薄緑で、影色を薄緑で表現したセル画設定を意識したもの。旧キットの説明書でも水性ホビーカラーの「ホワイトグリーン」指定でアニメ設定に忠実であろうとする当時の姿勢がうかがえる(とはいえ、旧キットの完成見本がホワイトグリーンで塗られているかは甚だ怪しい)。
この薄緑色はアニメをイメージしたカラーとして比較的新しいキットにも採用されていて、当然のように今回も採用されるんだと思っていたら独特の柔らかい色合いの極薄いグレー成形だった。
旧キットと並べて「伝統的な薄緑を更に薄くチューニングしたに違いない!」と言われたらそんな気がしなくもないけれど、単体で見ると錯覚で緑っぽさなどない漠然と薄いグレーのようにも思える。自分の目が信用できない……。「もしかしたら自分の視覚以上に”情報で色を見ている”のかもしれない」とさえ思わされる。

目の周りの黒い部分はガッツリと空洞にして陰になることで黒く見せるというエントリーグレードガンダムで採用された処理で表現されている。この都合からなのか、黄色いツインアイ自体が旧キットよりもだいぶ奥まった位置に造形されている。
シールドのグリップもコブシの穴の両側に突起をハメて挟み込む構造から、コブシの片側からL字状の棒を貫通させる構造変更されていて、じつは造形面でも(旧キットの見た目から大きく逸脱しない範囲で)チューニングがなされている。色もカタチも今風にチューニングしたうえで、それに触れずに「45年前と変わらぬカタチ」を謳うのはいささかコンセプトが揺らぎすぎではないかと思う。
横に塗料や接着剤を並べるとさも上手に作ったみたいだけれど、どれも全く使わずにこの姿になる。組み上がってみればまるで「プロが仕上げたカッチリクッキリとした旧キットのガンダム」のように見えるガンプラが顕現した。これはもう「ガンダムの1/144の模型」じゃなくて、「ガンプラ旧キットの1/1スケール模型」である。模型の模型だ。言ってしまえば全然”リアル”(=実在感を求めて造形をアップデートされてきたガンダムの模型)じゃない。自分のガンプラ遊びにとって大事なファクターである「リアリティを高めるための解釈やアレンジ」は、進化というより”変化”であり、いわば流行でしかなかったんだ……と否定された気分。その意味ではREVIVAL版はノットフォーミーだ。

スタイリングをそのままにしたことで言葉どおり「ガンプラの進化」がよく見えただろうか? 旧キットを組んだことがある人にはそうだろう。……とすると、このキットは「旧キット経験者向け」ということになるのだけれど、旧キットを知らない人のためにもどこが進化したのかをいちいち説明するというチグハグな説明書になっている。逆説的に言えば、(いまのガンプラに慣れ親しんでいる人にとってみれば)説明しないと分かってもらえない”進化”なのだ。いろプラをはじめとする「最近のガンプラの仕様」を「45年で培った技術の進化」とするならば、このキットじゃなくても最近のガンプラ(エントリーグレードやリアルグレードetc.……)のどれにも全部詰まっている。それらを”感動ポイント”と称して紹介しているのも興を削がれる。パッケージ総体としてコンセプトが揺らいでしまっていると思う。

それでも悔しいことに、机の片隅に置いておく「旧キットの模型」として自分はこのキットをとても気に入っている。年季の入ったガンプラファンなので、この姿形や組んだ体験から勝手にいくらでも文脈を引き出せてしまう「依代」として優れすぎているのだ。
この原稿もレビューというよりこのキットを依り代に「自分にとってのガンプラとは?」を再考する思索に近いもの。だから「このキットはここが優れているからオススメしたい」というお話にはならない。でも、みんなにもこのREVIVAL版ガンダムを組んでほしい。これまでのどんなガンプラよりも批評性が強い…現代アートなのかオマエは?