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『艦これ』で知ったアナタにも、見つけてもらいたい海防艦/超細密な鵜来のプラモデル

 靖国神社、遊就館の本館入口に向かって左手にひっそりとある海防艦顕彰碑。昔から「よくできた模型だなぁ」と思っていたのだけど、桜が満開だったこの日も人影はまばら。艦首に菊の御紋も無ければ、丙型以降は固有の名前ではなく番号が振られただけ。しかし第二次世界大戦でアメリカの潜水艦から商船や輸送艦を守るために大量生産された海防艦の奮闘を今に伝えている。


 艦これ効果……と断言すべきかどうかは分からないけど、艦これというゲームが存在しなければリニューアル(あるいは新規開発)が果たされなかったであろう艦艇は数多くある。このピットロード製1/700鵜来型海防艦などはその極北のひとつだろう。

 ピットロードは1990年代に孤軍奮闘、海防艦の1/700モデルをリリースしていたし、1/350スケールの鵜来型は2009年にリリースされている。その後は他社からの立体化もないなかで、今回さらに実物に忠実で精密なプラモデルとしてリニューアルした矜持は、あらゆるフネにスポットライトを当ててきた同社ならではのものだろう。

 種別上は「軍艦」に属さない彼女たちも、艦これのキャラクターになって名前を沢山の人に覚えられ、こうしてすこぶるシャープなプラモデルになってふたたび日の目を見ることになった。全長わずかに78.8mと駆逐艦よりもさらに小さいが、1/700スケールのプラモデルとして最新鋭の表現を盛り込まれているのでパーツ数は思ったよりも多い。

 キットは2隻入りで、フルハル(船の腹まで再現したもの)かウォーターライン(喫水線の上だけを再現したもの)を選択可能。鵜来型は4つの建造所で合計20隻が作られ、機銃の搭載方法にいくつかのバリエーションがあるが、それぞれ選んで組めるよう懇切丁寧な配置図が説明書に描かれている。だいぶ細かいプラモデルなので、ひとつめを練習用に、ふたつめを復習用に使ってもいいし、だれかと分け合って作ってもOKだ。

 組み上げると、わずか10cm少々の船体に信じられないほど濃密なディテールが凝縮された立派な船が現れる。滑り止めを始めとした濃い味のディテールはまさしくピットロードの艦船模型であることを思い出させてくれるし、三連装機銃の細密さなど艦船模型から離れて久しい人にとっては驚くべき解像度だ。

 決して「誰でも組み立てられる簡単なプラモデル」ではないものの、靖国神社で何度も目にしたあの船のことを知るうえでこの上ない体験となった。現代的精密さを備えた艦船模型の最小単位のひとつとしてこんなプラモデルがあることはぜひ知っておいてもらいたい。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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