

もうアナタはカーモデルにビビらなくていいし、アメリカ製のプラモデルに疑心暗鬼になる必要はありません。なぜならMPCのダッジ・デモンは「作ると完成する」というすごい特徴を備えているからです。
さて、ロサンゼルスの博物館で大量のローライダーを眺め、脳天を直撃したのは「外装と同じくらい、インテリアの色もド派手でいいのだ!」という概念。いやアメ車のすべてがローライダーというわけではないのですが、いまのオレにとっては「内外装を派手な色の組み合わせでキメたい!」という欲求が爆発しているわけです。やっていきましょう。

MPCのダッジ・デモン、インテリアはだいぶシンプルなパーツ構成ですが、最新キットだけあって位置決めは超スムーズです。後部座席の後ろに出っ張った2つの丸い穴はボディとの接合部で、国産カーモデルでよく見られる「シャーシにインテリアを結合してから最後にボディを被せる」という構成とちょっと違うのがアメリカンなんですね。

キラキラのメッキが施されたシフトノブ以外は全部組み上げてから紫の塗料をどーんと吹き付け、最後にトップコートでツヤを落とします。「ハンドルが紫!? ダッシュボードも紫!?」と自分でも思いましたが、アメリカンカープラモ華やかなりし頃のアメリカの子どもたちがカーモデルをどんなふうに捉え、どんなふうに作っていたのか想像しながら実践することを、私は強くオススメしたい。資料とにらめっこで細かい塗り分けにこだわるのもいいけど、「完成させること」はもっと大事だから、まずは好きな色に染めてから考えたい……。
つまるところ今回は、箱の中に入っているものたちによって引かれた線をなぞるだけでどんなことが起きるのかを知りたかったし、そこに設計者たちが込めた「ユーザーが迷子にならない配慮」を感じ取りながら、極力回り道せずに作りたかったのです。

シャーシ裏も本当にシンプルな構成なので、シルバーにしたいところ以外はボディと同じメタルイエローグリーンをガバーっと吹き付けます(エンジンは流石に別途塗っておけば良かったな〜)。工場出荷状態のクルマの裏側がこんなにキレイに塗られていたかどうかは置いといて、博物館で見たローライダーたちがわざわざ床に鏡を敷いてまで「裏側もキレイに塗ったよ!」とアピールしていたことに対するリスペクトなのです。

窓の周りのモールはタミヤのペイントマーカー(クロームシルバー)でビーッと描いてしまうのがいちばんラクです。モールが塗り分けやすいように実物よりも大仰な彫刻になっているのは、”実車に忠実な形状が数字通りにスケールダウンされていること”を目指して繊細な表現をよしとする現代の国産カーモデルとは異なる設計方針。ですが、このダッジ・デモンに見られるようなハッキリクッキリの彫刻は肩肘張らずとも塗り分けられるというメリットがあり、「ノービスでもカーモデルを楽しんでいいんですよ」というこれ以上ない明確なメッセージだと感じます。
こんなふうに、「インテリアとエクステリアの色を決めて、モールをマーカーで引く」という縛りさえ作ってしまえば、プロモデラーのような”緻密な仕事”をなぞらずとも完成品が手に入ります。もちろん、スキルフルなモデラーがひとつひとつの工程と真剣に向き合うことは否定しません。でも、「アメリカ製のカーモデルはちょっと難しいんじゃないか……精度がないから大改造を求められるんじゃないか……」と及び腰になっているアナタこそ、ダッジ・デモンを作ることで「細部を徹底的に再現することよりも、楽しみながら組んで塗ることにすごく寄り添ってくれている!」と驚くはずです。

どうやって向き合おうか悩んでしまうほど高解像度なディテール表現や細かなパーツ分割には決して走らず、適度なパーツ数で組み立てと塗装を楽しみ、それでいてクルマのフォルムやは実直に伝えることを重視する……というコンセプトがアメリカンカープラモの魅力です。また、いくつかの古いキットを組んでみるとおそらく昔からそのコンセプトは変わっていないのだろうな、ということもよくわかります。プラモデルから接着剤や塗料を遠ざけることだけが、経験の少ない人にとっての妙薬じゃないんだぜ……って。
特別なスキルを要求せず、「まずは組んでみてよ。塗りたければ塗ったらイイよ」という優しさと、実車の佇まいを端的に伝えるボディ形状の正確さ。この両方を「現代的なパーツ精度とノリシロによって誰にでもちゃんと組めるようにパッケージングしておきました」というアメリカ製カーモデルは、このダッジ・デモンが史上初かもしれません。アメリカンカープラモの分厚い歴史に新たなる1ページを加え、その先に新時代が到来するのならば、間違いなくこのキットがマイルストーンになるはずです。
まっすぐ進めば出来上がる。それってプラモデルなら当然?いやいやそうじゃなくってね。「できるプラモデル」には、国産だろうが北米産だろうが、ちゃんとポリシーとカラクリがあるんです……ということを教えてくれる快作。みなさんも、ぜひ。