

恐竜です。夏ですね。恐竜は夏の季語です(要出典)。今夏もそこらじゅうで恐竜イベントが開催され、相変わらず恐竜プラモデルも元気です。そんなこんなで気になっていたエクスプラスの新作を組み立てました。映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』に登場するヴェロキラプトルの“ブルー”(ブライス・ダラス・ハワード演じるクレアを差し置いてあからさまにメインヒロインです。正妻キャラなのであまり出番はありません)とその娘“ベータ”の親子セット。パッケージは雪のシエラネバダ山脈なので、涼を取るにもぴったりでしょう。
1993年に公開された第一作「ジュラシック・パーク」に登場する恐竜たちのデザイン・造型は、古生物学の当時最先端の知見を徹底的に反映させた最高の「恐竜映画」の俳優を作りあげようとするマイケル・ターシックをはじめとする現場のアーティストと、ハリウッド・エンターテイメントにふさわしい悪役を作り上げようとするスタン・ウィンストンや製作会社上層部とのプロフェッショナリズムのぶつかり合いの末に生まれたものでした。こうしたぶつかり合いの記憶は「ジュラシック・パークIII」を最後に失われます。「ジュラシック・ワールド」で主人公に育てられた相棒として登場した“ブルー”は、現実の恐竜像から切り離されて久しくなった「怪獣映画」のヒロインとして、完璧なキャラ付けをされた存在なのです。
そんなジュラシック・シリーズのアイドル“ブルー”とその娘(ジュラシック・シリーズの恐竜は単為生殖でガンガン増えます)“ベータ”のプラモデルである本キットは、実在したヴェロキラプトル・モンゴリエンシス、あるいはデイノニクス・アンティロプスとは骨格からしてかけ離れた造型です。しかし言うまでもなく本キットはジュラシック・ワールド三部作のメインヒロイン(異論は認めない)“ブルー”とその娘“ベータ”のプラモデル。スクリーンを縦横無尽に駆け回った姿が恐ろしく快適かつ楽しいキットとして手に入ってしまうのです。

箱のサイズはまずまずですが、手に取るとやたらずっしり。「ヴェロキラプトルってそんなに大きかったっけ?1/8ってなんぶんのいちなのぜ?」とフタを開けて己のうっかりを悟ります。映画ジュラシック・シリーズに登場するキャラクターとしての「ヴェロキラプトル」は、実のところ(実在した動物としてのヴェロキラプトル・モンゴリエンシスと)比較的近縁なデイノニクス・アンティロプスをモチーフとしたもの。実在したヴェロキラプトルはいいとこ全長2m強ですが、映画の「ラプトル」のモチーフとなったデイノニクス(いっときヴェロキラプトル・アンティロプスと呼ぶ人もいました)は3.5mほどになるのです。
“ブルー”も“ベータ”も歯と舌が別パーツになっており(“ブルー”に至っては口蓋も別パーツ)、レイヤーの重なりが非常に雄弁です。パーツ数は「生体復元」(骨格に肉付けしたもの)の恐竜プラモとしてはなかなかですが、おそろしく精度よく、かつ的確に分割されているので気持ちよく組み上がっていきます。パーツの精度のよさを殺さないようゲートの処理はきっちりこなす必要がありますが、さして苦労はしません。

本キットはとにかく「映画のキャラクター」の表現に心血を注いでおり、関節が可動するわけでなければ骨格を模したパーツを内蔵することもありません。エクスプラスの(ジュラシック・シリーズに登場する)恐竜プラモデルはガワのパーツがかなり細かく分割されていますが、インナーボディ(中子)に細かく割られたガワが吸い付くように組み上がります。尻尾だけは竹割りされたガワを貼り合わせていきますが、とはいえパーツの精度が非常によいので接着剤を流し込んですぐカタが付きます。
映画ジュラシック・シリーズといえば、恐竜の描写にCGだけでなく(より古典的な手法である)アニマトロニクスを多用しているのもポイント。キットを組み立てているうちに、撮影用のアニマトロニクスに外皮を貼り込んでいるような気分に陥ります。

台座(説明書には「重曹を振りかけて雪景色を表現してみないかい」と書かれています)に「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」のロゴ(相も変わらずティラノサウルスAMNH 5027が鎌首をもたげています)を取り付けたらできあがり。パーツの合わせ目は何の気なしに接着しただけでほぼ消滅するほどで、開発の過程で相当なすりあわせが行われたことがしのばれます。

骨格復元、骨格と軟組織の重ね合わせという構造、生体そしてジオラマ付きの生態復元と、令和に躍り出た各社の恐竜プラモデルには様々なアプローチが見られます。エクスプラスの恐竜プラモデルは、入念な設計と素晴らしい部品精度でムービースターたちの活躍ぶりを届けてくれるもの。近年のいきものプラモの中でも特に贅沢な技術の塊をたくさん摂取して、夏バテを防止しましょう。